アベノミクスは麻酔かヘロインか

安倍政権の経済・金融政策に募る不安

では、なぜアベノミクスはヘロイン中毒になぞらえられるのか。

安倍晋三首相が打ち出した、今後10年間毎年GDPの4%に相当する公共投資を実施するという公共事業計画は、自民党の昔ながらの処方箋「行き先のない橋」にダブってしまう。消費増税を社会保障に利用するという話はいったいどうなったのか。

過剰な円安政策は企業の弱体化を招く

健全な経済においては、財政刺激はGDPギャップを縮小するきっかけになる。企業の設備稼働率が上昇し、雇用や新規設備の購入につながる。さらに消費が活性化され、企業の売り上げも上向き、財政刺激策をやめても安定的な状態が続く。

が、日本経済は健全ではない。このことを示す完璧な例が昨年あった。自動車とテレビの購入に対する補助金がなくなると、販売が急減したのだ。実質賃金やほかの所得が減少または横ばい状態のため、消費者需要は弱い。たとえば、実質GDPは1997年初めから8%増加したが、全労働者の実質所得合計は、実質賃金が長年減少していることもあって97年から増えていない。

日本は内需でなく、貿易黒字拡大のための円安政策に頼ってきた。2002年から07年にかけての景気回復時、GDPの伸びの4割は貿易黒字の増加、3割は輸出関連企業の投資によるものだった。だから日本は世界的な経済不振の影響をこんなにも強く受けた。

現在は円高だといわれているが、日本がデフレで、他国がインフレである事実によって円相場を換算すれば、00年代半ばの円の実質相場は過去四半世紀の平均をほぼ30%下回る。日銀の資料によれば、12年につけた名目水準の高値においてさえ、円の実質相場はなお長期的な平均を下回った。ソニーの問題は強い製品がないことで、円相場ではない。安倍首相はここまで日本を低迷させた円安政策を繰り返そうとしている。

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