規制緩和は「絵に描いた餅」状態
安倍首相には建前はあっても、本当の意味での成長戦略はない。労働人口が減少する中、GDP成長の唯一の源泉は、生産性向上すなわち労働者1人当たりのGDPを伸ばすことである。成長を加速するには生産性革命が必要だ。実際、日本は多くの分野で世界のトップグループからひどく遅れているので、世界標準に追いつくだけで大幅な生産性向上が見込める。
しかし、そのためには多大な企業改革が欠かせない。企業間競争を促進させ、より優秀な企業が取って代われるよう、非効率な企業を倒産させてもよいという姿勢が必要だ。ただしその前に、改革によって痛手を受けた人々を保護する社会的なセーフティネットをしっかりと築かなければならない。
が、安倍首相にはこうした計画はなく、国内企業の保護を続けている。先の衆議院選で当選した自民党候補のうち154人は、TPP(環太平洋経済連携協定)参加に反対すると約束することでJA全中の支持を取り付けた。首相はエネルギー戦略を打ち出すのに何年もかかるとの見通しも示している。規制緩和は絵に描いた餅状態だ。
一時的な景気刺激策は7月の参議院選で自民党の追い風となるだろう。しかし、日本が必要としていることは、構造改革というつらい課題に着手し、その影響を財政および金融刺激策と社会的セーフティネットの改善によって和らげるということだ。さもなければ、現在の刺激策が将来的にさらなる刺激策を必要とする状態を呼ぶにすぎない。それこそまさに中毒状態である。
(撮影:尾形文繁)
(週刊東洋経済2013年2月2日号)
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