違法民泊撲滅に動き出した京都市の「本気度」 蔓延する住民の不安を解消できるか

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5月9日時点の調査によって明らかになった京都市内の民泊の施設数は、2702件(戸建て935件 集合住宅1677件 その他90件)。そのうち、旅館業法上、無許可と推測される施設は1847件にものぼり、実に全体の68.4%を占めている。

宿泊料を受け取る目的で、常態的に部屋や設備を備えていれば、旅館業を行っていることになる。しかし、民泊の場合はその判断が難しい。部屋を純粋なスペースとして貸しているだけなら、あくまで短期の賃貸借をしているだけということになる。一方、寝具などを提供していると宿泊業とみなされるわけだが、運営の内容は外部から見えにくく、事実関係の問題であるため、実態を掴みにくい。これが、民泊がグレーゾーンと言われる理由だ。しかし、Airbnbなどに掲載されている部屋の写真を見ると、明らかにベッドなど寝具一式が整ったものが掲載されている。

宿泊環境整備係長の吉田健二氏は、「超短期の賃貸借契約を結んでいるだけだと言い張り、確信犯的に違法民泊を行う運営者や代行事業者が多い」と話す。国において、民泊の規制緩和が議論されている報道を曲解したり、業者の言うことを鵜呑みにして、「民泊を行うこと自体、法律的にグレー」、つまり違法ではないと考え、投資する人が後を絶たないようだ。

空き家となった京町屋が投資対象に

こうした違法民泊が始まると、見知らぬ人が出入りして周辺住民の不安を招くという問題もあるのだが、京都市は他の都市にはない特有の事情から、状況は深刻だ。一般的に、民泊は分譲マンションなどで行われることが多い。しかし京都では、木造家屋の町屋が民泊目的の投資対象となっている。古都の雰囲気を感じることができる場所として、外国人観光客に人気があるのだ。

市内は、幹線道路からほんの一歩入れば、細い路地が出現し、木造家屋がひしめきあっている。通りに抜ける出口は一箇所で、袋小路になっている所も多い。こうした場所で一件火事があれば、周辺住民すべての生命、身体に影響がある。

「外国人観光客の場合、火事の時に『119』に連絡することを分かっている人は多くない。路地の入り口で火事になったら、路地奥に住んでいる人全員が逃げられなくなり、大変危険だ」(糟谷氏)

また、マンションなどの集合住宅と比較すると、多くの人数が宿泊可能なため、騒音につながりやすい。木造家屋であるため、壁も薄く、周辺住民は宿泊者のいびきで眠れないというケースもあるという。

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