鳥貴族が快進撃を続けられる本質的な理由 その儲けの構造を抽象化思考で読み解く

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これに対して鳥貴族は、メニューが焼き鳥中心だが、何といっても鶏肉が新鮮で美味しく焼き上がっていながら280円均一と安い。これを同じく商品でいえば、機能は絞り込まれているが、どれも非常によく仕上がっている上に、価格も安い。万人受けしなくとも、一部の消費者には刺さる商品ということだ。1階以外の通りから目立ちにくい階に出店し、家賃を節約していることは、たとえば広告宣伝におカネをかけずにクチコミとリピーターで販売を伸ばすといった連想ができる。

「発想を広げる」ことが重要

『深く、速く、考える。「本質」を見抜く思考の技術』(クロスメディア・パブリッシング)。画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

このように、因果関係マップをつくることよりも、それによって頭の中に抽象化された施策が入ることで「発想を広げる」ことが重要だ。

筆者はトヨタの製品開発手法に基づいて欧米で発想された「リーン製品開発」という手法を企業に普及させる仕事をしている。その中で「構想設計」と呼ばれる、製品の図面を描き始める前に製品のさまざまな特性をどう設定すべきか検討する段階がある。ここで製品の複雑な因果関係を理解するために、因果関係マップ(Causal Map)に出合い、数年前からコンサルティングしている数社でこれを使い始めた。

確かに製品の具体的な形が決まっていない段階で、因果関係マップを著者が描いてみせると、開発者たちは「頭の中がすっきりした」とか「問題の本質がわかる」と高く評価してくれた。つまり複雑な因果関係が、一目で理解できるようになる。

しかし、開発者自らが因果関係マップを描こうとすると、最初から描ける人は1割しかいなかった。これは、抽象化思考をすること、つまり「深い構造を読み取ること」を人の脳は苦手とするからだ。因果関係マップを多くの人が使いこなせるようになるには、そのためのトレーニングを開発しなければならない。これが、私が「深速思考」と呼ぶトレーニングを開発したきっかけだった。これはいわば「非トヨタ社員が『トヨタの思考』を身につける訓練方法」ともいえるだろう。

稲垣 公夫 グローバリング代表取締役

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いながき きみお / Kimio Inagaki

1951年生まれ。東京大学工学部卒業、ミシガン大学工学部大学院修士課程修了。NECにて製造管理部担当部長、NECアメリカ副社長などを歴任。ジェイビルジャパン代表取締役社長などを経て現職。エリヤフ・ゴールドラット博士の『ザ・ゴール』を契機に国内へ広がったTOC(制約条件の理論)の考え方にいち早く着目し、同書日本語版の解説も務める。また、米国でのトヨタ研究への造詣が深く、第一人者であるミシガン大学のジェフリー・ライカー教授らによる『ザ・トヨタウェイ』『トヨタ経営大全』シリーズや、同じくトヨタの製品開発方式(リーン製品開発)を体系化したアレン・ウォード博士らの著作の翻訳・研究でも知られる。2010年にはグローバリング(株)を設立し、主に製造業を対象に、リーン製品開発や経営戦略のコンサルティングを行う。主な著書に『深く、速く、考える。――「本質」を瞬時に見抜く思考の技術』(クロスメディア・パブリッシング)、『マンガでわかる! トヨタ式資料作成術』(宝島社)、翻訳書に『トヨタのカタ』(日経BP社)など多数。
 

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