財産が300万円でも、遺言書を書いてもらう 必ずもめる相続税の話(3)

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遺言書が「原則」で法定相続分は「例外」

「亡くなった人の財産をもらう権利がある人(法定相続人)」や「取り分(法定相続分)」は、民法という法律で定められています。

 しかし、亡くなった人の財産は、その財産の持ち主の意思である遺言書に従って分けるのが原則で、法定相続分で分けるのは、あくまで例外的な取扱いです。

一応、「遺留分」という取り分が兄弟以外の相続人にはありますが、それを無視して遺言書を書いたとしても、遺言書が無効になるわけではありません。遺留分を返せと言われたら、遺言書で財産をもらうことになっている人が返せばよいだけです。

遺言書がなかったら、相続人の全員で遺産分割協議と呼ばれる財産分けの話し合いを行いますが、立場が違えば考え方も違います。全員が完全に納得する解決策はありません。それなのに、遺産分割協議では「全員の意見が一致」しなければならないのです。

もし、遺産分割協議が決裂すれば、家庭裁判所での調停や審判に進みます。
 親亡き後、もし兄弟が円満なら、全員で話し合い、遺言書と異なる遺産分割をすることは可能です。財産分けの問題は、遺言書があるとないとでは、大違いなのです。

遺言書こそが一番の相続税の節税対策

相続税は、亡くなってから10カ月以内に、「現金・一括払い」することが原則です。 

しかし、それまでに財産の分け方が決まらずに、「未分割」という形で相続税の申告をするときには、相続税が安くなる次の2つの特例が使えません。

・「自宅の土地の8割引特例」

 この特例は、その土地を誰が相続するかがポイントなので、財産の分け方が決まらなければ、当然使うことができません。5000万円の自宅の土地なら、8割引の1000万円になるはずが、5000万円のままで相続税を計算しなければなりません。

・「配偶者の税額軽減の特例」

 妻が夫から相続した財産が、法定相続分か1億6000万円のどちらか大きい金額までなら、妻に相続税はかからないという、とてもお得な特例です。妻が何をいくら相続するのかが決まらなくては、この特例が使えません。通常、相続税が倍以上になってしまいます。

次ページ親が死んでから時間がたつと、特例が使えなくなる
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