フランス生活に「マルシェ」通いは欠かせない 旬の食材そろう青空市場は社交の場でもある

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朗らかな店員のいる肉屋のショーケースの中には、肉加工品と牛肉、豚肉などが陳列されていた。肉はかたまりや厚い切り身になっている。この店では、主に肉加工品を買っていた。「何にしましょうか」と、女性の店員が歌うように注文を聞く。「ハムを3枚ください」などと頼むと、その場でかたまりから切り取ってくれる。パエリアなどの総菜も売っていた。鶏肉は別に鶏肉専門の店があり、骨付きのモモ肉や胸肉、手羽先、レバーなどを扱っていた。

フランスでは、ふつうの肉屋やスーパーで、薄切り肉や骨を外した鶏モモ肉を手に入れることが難しい。日本食料品店では、薄切り肉を売っているが、近くにそんな店がない場合は、自分で作成する。肉を冷凍して包丁で薄く切るのだが、手が冷たくなるうえ力も要るので、なかなか大変だった。

市場からフランス食文化の豊かさを体感

このマルシェには、フランスの食文化の豊かさを感じさせられる店が、ほかにもあった。購入したことはなかったが、馬肉屋があり、赤身の肉やソーセージが並んでいた。根菜専門の店もあり、ジャガイモは、「ピューレ用」「蒸し料理用」などと、用途別にさまざまな種類があった。キノコとハーブを扱う店では、春にはツクシのような形をした野生のアスパラガス、秋にはセップやジロール茸などの日本では見たことのないキノコと出合った。

口数の少ない、優しい笑顔のムッシューが営む卵屋もあった。スーパーでも卵は売っているが、殻にひびが入っていることがあった。ムッシューは、殻にひびが入っていないか、一つひとつ丁寧に確認してから商品を渡してくれた。

マルシェでの買い物は、行列をしたり、たくさんのやり取りをしたりするので、時間がかかる。買い物カートを引いて、あちらこちらの店を回ると、1時間くらいかかることもあった。しかし、良い食材を手に入れると同時に、店の人との会話が楽しめる、今振り返っても、有意義なひとときだった。

国末 則子 フリーライター

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くにすえ のりこ / Noriko Kunisue

フリーライター。東洋経済新報社、朝日新聞記者を経てフリーライターになる。2001~2004年、2007~2010年の2度にわたってパリに滞在し、2人の子どもを現地校に通わせた。著書に『パリの朝食はいつもカフェオレとバゲット』(プレジデント社)。
 

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