福岡の「楽園企業」は社員をここまで休ませる 社員満足最優先でも儲かる会社はつくれる!

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――会社の業績はいかがですか?

建設業界はデフレの影響で20年近く落ち込み、当社も5年前までは売上がピーク時の6割近くまで落ちたものの、創業以来40期、利益はつねに確保してきた。ここ数年は業界が持ち直したため当社も最高益を記録しています。ずっと昇給しているし、この10年決算賞与も出している。社員には持続的に安定した給与を払うことで安心して働いてほしいし、利益が出たら還元しています。

――なるほど、当たり前を徹底して結果が出たと。

顧客満足を多少抑えても、トップがしっかり経営姿勢を貫き、社員満足度を高めれば、お互いの信頼もモチベーションも生産性も上がる。まだ課題はありますが、当社が目指しているのは「一流の中小企業」。その原点は働きやすい職場を作り、維持することだと考えています。

トップの理念が社員に浸透すれば、それが一人ひとりの物差しとなり、皆が自主的に仕事を進められる。社長はラクできますよ。会社の方向性を決めることが私の仕事で、この20年、お客様を訪問したこともない。午前中は新聞を読み、昼は自宅か外でご飯を食べ、2時ごろ戻り実務をして定時に退社する。会社のカギも持っていない。

心の支えは、岐阜の未来工業だった

「私は会社のカギも持っていない」と明かす藤河社長

――藤河さんも休むのですか?

幹部と同じくらい休みます、山に行くのが趣味なんでね。ほら、山には四季折々の表情があって、1年に数日しか咲かない花もある。そのタイミングにあわせて数日休み、山をめぐります。

――御社は「一流の中小企業」になったと感じていますか?

正直なところ、自分ではわかりません。でも、最近は様々な賞をいただくようになり、客観的に評価され認めてもらうのは素直にうれしい。受賞したことがマスコミで広まると、営業はお客様から「あなたの会社はいいですねぇ」とチクッと嫌味を言われたりするみたいだけど。でも、実際に働きやすい会社にいて恩恵を受けているのだから、そこは割り切っているようです。

――藤河さんは強いリーダーシップで結果を出してきた。不安もあったと思いますが、どう乗り越えたのでしょう?

心の支えにしていたのは、岐阜の未来工業と長野の伊那食品工業の存在です。職場改善の最中、自分と同じようなことを考えているユニークな会社があると知り、訪問して話を聞かせてもらった。その後は録音テープを繰り返し聞き、自らを鼓舞してきました。

あと、モヤモヤがたまったら、山で雄叫びをあげてましたね。中洲に飲みに行ったって、おカネがかかるだけでスッキリしない性分だと思うけど、山の中で大声を出したらスッキリするんですよ(笑)。

――会社設立から40年、後継者は育っていますか? 確か息子さんがいらっしゃるとか。

私は30歳で創業して、今年70歳。息子は東京でまったく別の仕事をしている。息子に継いでほしいと思ったことはないし、むしろそれは絶対しないと決めていました。息子が継ぐと、私はいつまでも会社の心配をしないといけないから(笑)。

それにずいぶん前、社員5人が会社を継ぎたいと言ってくれたんです。新卒で入り今40代の彼らに、経営者の仕事を伝えてきました。もういつでも彼らにバトンタッチできます。それは社内でもオープンで、今後の方向性について社員にアンケートを取ったところ、「今の社風を大事にしたい」という意見が大半だったので、当面はこの社風を変えずにやっていってくれるでしょう。

佐々木 恵美 フリーライター・エディター

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ささき えみ / Emi Sasaki

福岡市出身。九州大学教育学部を卒業後、ロンドン・東京・福岡にて、女性誌や新聞、Web、国連や行政機関の報告書などの制作に携わる。特にインタビューが好きで、著名人や経営者をはじめ、様々な人たちを取材。

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