福岡の「楽園企業」は社員をここまで休ませる 社員満足最優先でも儲かる会社はつくれる!

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藤河次宏(ふじかわ・つぎひろ)/福岡市生まれ。福岡大学を卒業後、地元の建材商社を経て、1977年に30歳で「拓新産業株式会社」を設立。30年前から職場改善に取り組み、好事例として注目を集める。趣味は登山

――労働時間をどうやって減らしたのでしょうか?

とにかくそれまでの習慣を見直しました。たとえば、営業がいつも夕方になって総務に書類を回すために、残業が発生していた。翌日の処理でいいものはハッキリ伝える、というだけでも変わります。そんな細かな改善を、私が関わり2つ3つやってみると、あとは社員が自分たちで考えて進めてくれた。ちなみに、当社では年賀状もお歳暮も一切出しませんよ、前はやっていたけど。

――全員が100%有休を取っても、業務に支障はありませんでしたか?

むしろプラスになりました。有給休暇は勤続年数に比例するので、上司の方が多く休む。上司は「自分がいないとダメだ」と思い込んでいたけど、いざ休んでみると、部下がうまく仕事を回している。皆が指示待ちではなく、自主的に効率よく動けるようになったんです。

業務時間後に顧客が来ても、絶対に門を開けない

――お客様への対応は?

うちは「顧客満足」を多少抑えても、「社員満足」を優先する。それは経営理念でも、はっきりうたっています。ある意味で「顧客満足」を捨てる選択をしたんです。

工事現場は工期があり、無理を言われることも多い。当社の方針を貫くために、無理な要望は丁寧に、でもきっぱり断ってきた。たとえば、業務時間後に建材を返却に来て、門を開けてくれと迫られても、絶対に開けない。あとで話し合いの場を設け、「早めに電話してもらえれば、少しなら融通が利きます」などと伝えて折り合いをつける。 

――営業は板挟みになるのでは?

お客様のことを第一に考えれば、はっきりモノを言いにくいものです。だからその気持ちは大事にしつつ、別の人がフォローする体制にしています。20年ほど前から、営業以外の人が毎月お客様の現場を訪ね、協力を依頼しています。「当社は残業しないから早めに連絡ください」「建材を返すときはきちんと梱包してください」とか、守ってほしいことを伝えるんです。口で言うのが厳しければ、せめて紙を置いてくる。それで少しずつ改善してくれる現場もあれば、まったく変わらないところも。でも、少しでも改善されればいいんです。

――そこまで徹底すると、他社に乗りかえるお客様も出てきそうですが。

そこは営業戦略があります。大口になるから下請け化して、お客様の要望を断れず言いなりになってしまう。だから当社では小口分散を基本とし、現在は数百の顧客がいます。それに、お客様に協力をお願いしている分、こちらも普段の対応はしっかり丁寧にするように心がけています。

――確かに社員の対応がすごく速く丁寧で、社内の雰囲気もいいなと感じました。

そう言っていただけるとうれしいですね(と照れた表情に)。お客様に依存せず、こちらから気配りして行動するよう指導しています。すると、そんなに断られないものでして。

――社内を見わたすと、女性が多いですね。

同業の中でも女性比率が高く、3分の1は女性です。育休取得率も100%で、中には4回取った人もいますよ。

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