「子なし夫婦」のなかなか理解されない実態 少子化対策の大義名分が彼と彼女を苦しめる

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子どもを持たない選択はなかなか理解されない。職場では「よほど子どもができにくいのか」と心配され、上司には飲み会の席で「悩みがあったら打ち明けてもいいんだよ」と気遣われた。

学生時代の友人に「子どもが欲しくない」と話したら、汚らわしいものを見るかのようなまなざしを送られた。彼女は独身だったが、家族との結びつきが強く、「子どもは幸せの象徴」と信じて疑わなかったのだ。子どもがいる友人には出産を強く勧められた。「子どもが持てる環境なのにその考えはない。持てる者と持たざる者でいえば、持たざる者になってしまうよ」。その友人とは次第に疎遠になってしまった。

人生は自分で決めるもの

何よりも苦しいのは「親不孝ではないか」という罪悪感だ。自分は親に大切に育ててもらったのに、それを仇にして返すつもりなのか?夫は自分の両親や親戚に、毅然とした態度で「子どもを持たない選択」を主張するけれど、もしかしたら冷たい人なのではないか?

そんな気持ちを英会話学校で話したら、米国人の男性教師に「人生は自分で決めるもの。なぜ親が関わるの?」と言われ、はっとした。夫とはこうした心情も、包み隠さず打ち明けてきた。「自分の人生は自分で責任を取る」という、根っこの考えは夫婦で一致している。

もちろん今後子どもを持ちたいと考えが変わる可能性はある。3カ月に一度、避妊用のピルを取りに行くときに「いいよね」とお互いの意志を確認するようにしている。

子どもがいない家庭の事情はさまざまだ。価値観が多様化する中、少子化対策という大義名分を振りかざすだけでなく、子どもを持てない、持たない夫婦が肩身の狭い思いをしなくてすむ社会にしていくことも必要なのではないだろうか。

斉藤 真紀子 ライター

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さいとう まきこ / Makiko Saito

日本経済新聞米州総局(ニューヨーク)金融記者、朝日新聞出版「AERA English」編集スタッフ、週刊誌「AERA」専属記者を経てフリーに。ウェブマガジン「キューバ倶楽部」編集長。共著に『お客さまはぬいぐるみ 夢を届けるウナギトラベル物語』

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週刊東洋経済編集部
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