女性はなぜ出世すべきなのか? 出世することの2つのメリット

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「でもうちの会社の幹部なんて、全然うらやましくない。あの人たちの仲間にはなりたくない」と思うかもしれません。

でもいざ出世してみると、高いところに上った人にしか見えない、今までよりもっと広い世界が見えてきます。前述したように出世すると入ってくる情報の量が違いますから、「私が手掛けている薬の開発より、再生医療に注力したほうが世の中のためになる」と思い直すかもしれない。

さらに言えば、今の時代はリスクを取らないことがリスクです。もし自分たちの上に、あまりにもリスクを取らない人たちがたくさんいたら、自分たちの世代は先送りにしてきた負の遺産を押し付けられる可能性もあります。そういう経営判断をさせないためにも、「場」に上がることは重要です。

出産前に「信頼貯金」を貯めておく

そのためにはやはり出世したほうがいい。ではどうすれば出世できるかといえば、前倒しでキャリアを「意識的に」構築することが必要です。

終身雇用の時代は、極端にいえば、結果を出すのは50代以降でも構いませんでした。しかし今の時代、抜擢される人になるには、人より早回しで成長する必要があります。20代がインプットの時代だとしたら、30代からはインプットと並行しながらそれを拡張していき、遅くとも40代からは結果を出すことが求められる。

しかし女性の場合、結婚・出産でキャリアが中断されますから、それをもっと早めにやっておくことです。体力のある20代のうちに男性よりも頑張って、できれば出産前の28〜32歳ごろまでに「潜在可能性を立証できるような、わかりやすい実績」を1つ2つつくっておく。「この人はこれだけの実績を出せているのだから、今後の成長も見込めるだろう、だから投資(次の成長の機会の提供)しておかなければ」と思わせるだけの実績です。

そうやって「信頼貯金」の残高を貯めておけば、結婚・出産しても会社から戻ってきてほしいと言ってもらえますし、戻ってきてからも「子どものお迎えがあるので5時で帰ります」という働き方を認めてもらえる。若いうちに頑張っておけば、後になって自分が仕事の内容や働くスタイルを選べる側に立て、自由度が増すのです。

出世は目的ではなく、自分の人生を自分で決めるための手段です。まずは女性たちも、「出世」を敬遠せず、「健全な」出世欲を持つことからスタートしてはいかがでしょう。男性に比べて速いサイクルでキャリア上の意思決定を求められる女性こそ、「早回しのキャリア形成」が向いています。それこそが、生涯にわたって、自らの価値観に合致したワーク・ライフ・バランスを勝ち取る大きな武器になるのではないかと私は考えているのです。

(構成:長山清子、撮影:今井康一)

岡島 悦子 ヒューマンキャピタリスト、プロノバ社長

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おかじま えつこ

ヒューマンキャピタリスト、経営チーム強化コンサルタント、リーダー育成のプロ。三菱商事、ハーバードMBA、マッキンゼー、グロービス・グループを経て、2007年プロノバ設立。丸井グループ、セプテーニ・ホールディングス、マネーフォワード、ランサーズ、ヤプリにて社外取締役。20年12月より、ユーグレナの取締役CHRO(非常勤)に就任。世界経済フォーラムから「Young Global Leaders 2007」に選出。著書に『40歳が社長になる日』(幻冬舎)他。

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