(第2回)再生医療と幹細胞(その2)

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●ES細胞がはらむ危険性−脳の中で筋肉に?

 しかし何にでもなれる、ということは逆に危険性をはらむ。神経になったつもりで脳に移植したES細胞が脳で心筋になってしまっては困る。一般的には、脳という環境で細胞が筋肉や肝臓の細胞に分化したり、あるいは逆の現象は考えにくいが、局所的な環境で何がおこるのかは想定しきれない。
また、安全性の確保のためには分化転換(一度分化した細胞が異なる種類の細胞にさらに分化する)という問題や、脱分化(一度分化した細胞が未分化な状況に戻る現象)、それらがどのような環境や刺激で起こりうるのか、という複雑な事象について完全にコントロールする必要がある。
 細胞を分化させてから移植したつもりでも一匹でも未分化なES細胞がまざっており、これが別の組織に分化しながら増殖する可能性も否定できない。未分化なES細胞はもともと直接移植するとテラトーマ(奇形腫)とよばれる様々な組織を含む腫瘍となることが知られており、ES細胞であることの評価基準のひとつともなっている。したがって、未分化なES細胞が混入しないよう充分な分化誘導を行い、分化した必要な細胞のみを精製することが必要になる。

 欲しい細胞のみを他の細胞群から取り出す技術であるセルソーティングについては回をあらためて紹介する。さらにはすべての移植に共通する問題、拒絶の問題がある。自分自身の細胞からES様の細胞をつくることができないかぎり、拒絶を回避するなんらかの工夫が必要になる。最近、この点について画期的な研究成果が京都大学から発表された。ES細胞の拒絶の回避については最終回にお話したい。

渡辺すみ子(わたなべ・すみこ)
慶応義塾大学出身。
東京大学医学系研究科で修士、続いて東大医科学研究所新井賢一教授の下で学位取得(1995年)後、新井研究室、米国Palo AltoのDNAX研究所を拠点に血液細胞の増殖分化のシグナル伝達研究に従事。
2000年より神戸再生発生センターとの共同研究プロジェクトを医科学研究所内に立ち上げ網膜発生再生研究をスタート。2001年より新井賢一研究室助教授、2005年より現在の再生基礎医科学寄付研究部門を開始、教授。
本寄付研究部門は医療・研究関連機器メーカーであるトミー、オリエンタル技研に加え、ソフトバンクインベストメント(現SBIホールディングス)が出資。
東大医科研新井賢一前所長(東大名誉教授)、各国研究者と共にアジア・オセアニア地区の分子生物学ネットワークの活動をEMBO(欧州分子生物学機構)の支援をうけて推進。特にアジア地域でのシンポジウムの開催を担当。本年度はカトマンズ(ネパール)で開催の予定。
渡辺すみ子研究室のサイトはこちら
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