ホームレスに、リーダーシップを学ぶなら MIT流、思い込みを打ち破る方法

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話を聞くうちに、ボブさんは、コミュニケーション能力に長けていて、新聞を売るのがとてもうまいのだが、そのセールス能力を生かせていない事実がわかってきた。

生活保護を受けるには、収入がありすぎてはいけないからだ。そのため、一定数を売ると、売るのをやめてしまうしかないという。

山本さんは、この仕組みに疑問を持った。

「社会保障制度には意義がありますが、ボブさんの自立を逆に妨げてしまう一面もあります。ボブさんの能力を生かしながら、同時に生活をサポートしていく仕組みを作り上げるために、社会的企業にできることがきっとあると思いました」

さらにボブさんは、自分よりも恵まれていない立場の人が、ハーバードスクエアを通ると必ず手助けを申し出るようにしているという。山本さんたちのインタビュー中にも、盲目の女性が通りかかったとき、「You need help?」と語りかけた。

なぜわざわざ新聞売りの途中でも助けを申し出るのか聞いてみたら、こんな答えが返ってきた。

「目が不自由な人たちは、どういう世界で生きているのか、自分できちんと理解したいから、時々、手で目隠しをしてみるんだ。すると、とても不安な気持ちになる。そんな不安な気持ちが少しでも和らぐように、手助けするんだよ」

山本未生(やまもと・みお)
1979年東京都生まれ。2005年東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、住友化学でマーケティング・営業に携わる。同年、仕事と並行して、ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京に参画。NPO法人「農家のこせがれネットワーク」など、革新的な社会的企業を「汗と時間とお金の投資」で支援。2011年住友化学を退社し、米マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院に入学。同年、一般社団法人「World in Asia」を立ち上げ、現在ディレクターとして東北の社会起業家を支援している。

ボブさんは、MITの学生にじっくり話を聞いてもらったのがよほどうれしかったのか、「すばらしい1日をありがとう!」と言って、近くのダンキンドーナツでコーヒーをおごってくれたという。

自分より経済的に恵まれないと思って話しかけた男性は、率先して、「さらに恵まれない人」の助けを買って出ていた。

「ボブさんが、『自分ができる範囲で、率先して人を助ける』というリーダーシップを発揮していることに、感激しました。ボブさんとの対話は、自分が大切にしたいものを再確認させてくれました」

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