EUを抜けても、英国の「外交パワー」は不変だ 外交において英国が誇る絶大な影響力とは?

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第1は、離脱に伴う清算と離脱後の英国とEUの関係を定める交渉がどうなるかだ。基本条約では、交渉期間は2年となっているが、延長される可能性もある。英国としては離脱後もEU諸国と自由貿易を維持したいだろうが、EU側はただでそれを認めるほど甘くない。

非EU国とEUとの関係としてはノルウェーの例がある。ノルウェーはEU側から要求された条件を広く受け入れてEU市場への関税なしのアクセスを確保しているのだが、EU予算への拠出もしている。それだけの代償を払いながらノルウェーとしての独自性を維持しているわけだ。

スイスの場合は多数の(3桁に上る)個別協定でEUとの関係を処理しているが、金融については協定がない。スイスは独自の金融政策を持っており、スイスの銀行をEUのコントロール下に置きたくないからだ。また、スイス人の間には、EUに加盟すれば小国スイスの利益は無視されがちになるという意識が強い。

しかし、これらは英国にとってあまり参考にならないかもしれない。英国ははるかに大きく、影響力も強いので、新たな方式が編み出される可能性が大きい。

なお、かりに交渉がまとまって新協定が結ばれても、英国の国論が二つに分かれた状態では協定の批准が円滑に行われないおそれがある。英国議会、特に下院は残留希望が大勢であり、国民投票結果と下院はいわゆる「ねじれ現象」になっているからだ。いずれは英国内で解消されるだろうが、さらなる混乱を惹起しかねない問題点だ。

安全保障面での関係は不変

第2に、英国はEUから離脱しても欧州諸国と無関係になるのでなく、今後も両者の関係は密接であることに変わりはない。英国はNATOの一員として、また、国連安保理の下で欧州やその他の地域の安全保障に重要な役割を果たすだろう。

問題は、移民・難民についてどのような変化が起きるかだ。建前としては、英国はEUから離脱することにより、独自に移民・難民問題について決定できることになるが、実際に起こる変化は建前ほど大きくないと思われる。

移民・難民ともに英国には歴史的な責任がある。合法的な移民と一口で言っても旧英連邦諸国からの移民のように英国に比較的受け入れられやすい移民もあれば、現在問題視されがちな東欧諸国からの移民もある。また、シリアなど中東諸国から流れ出た難民についても、中東の大きな部分を植民地としていた英国として多かれ少なかれ歴史的責任を免れられない。法的には責任はないとしても、もし英国がこれらの問題について関心を持たず、各国とともに問題解決に当たることをしなくなれば、国際社会から強く非難されるだろう。そんなことはEU離脱後もありえないことに思われる。

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