その逆は「リスクオンの円安」で、英国の国民投票も「残留」が決まれば、やれやれホッとした、ということになって再び資金はポンドやユーロに戻ってくる。となれば、もはや円資産に用はなくなるので、円は売られることになる。ということで、今週末は円高か円安か、どちらかに大きく振れそうである。
待て待て、リスクオフの円高はしょっちゅうだけど、リスクオンの円安はあんまり起きていない気がするぞ、という声が聞こえてきた。それもそうだ。実際、今年は黒田・日銀がマイナス金利まで導入したにもかかわらず、為替は円高方向に動いている。それというのも、ブレグジットだの「トランプ大統領」だの、年初の時点では考えもしなかった変なリスクをいっぱい抱えていることが背景にある。
もちろんそれだけではない。年初の時点で米国の利上げは「年4回程度」と見られていたが、先週で4回目のFOMCが終わったというのに、利上げはまだ1度も実施されていない。5月の雇用統計が悪過ぎたこともあって、いいとこ利上げは年1回程度に終わるかもしれない。ということで、米国経済が思ったほど強くないこともドル安要因、転じて円高要因となっている。
市場介入を実施すると米「監視リスト」入り
それから4月に米財務省が発表した為替報告書で、日本が「監視リスト」に入れられるというサプライズもあった。昨年、米議会がTPPを審議した際に、「為替操作監視条項を入れろ」という要望があったのだが、それでは交渉がまとまらないと米財務省が必死に押し戻した。その反動で、為替報告書を厳しくする法改正が行われていたのである。すなわち下記の3条件のうち、他国が2つを満たすと自動的に監視リストに入れられるようになってしまった。
現時点では日・中・韓・独が①と②に、台湾が②と③に該当している。仮に日本が③市場介入を実施すると、その時点で栄えある初代「三冠王」となってしまう。ここでGDP 2%以上、という点がミソである。日本の場合は500兆円×2%=10兆円なので、介入資金が10兆円までならOKとも読めるが、逆に投機筋から「日本政府が動かせるのは10兆円までだ」と見透かされてしまえば、それこそ絶好のカモになってしまう。
今回も仮にブレグジットになれば、麻生財務大臣が「口先介入」するかもしれないが、実際問題として為替介入のハードルは非常に高いと言わざるを得ない。少なくとも米議会やドナルド・トランプ氏の対日非難を逃れることはできないだろう。
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