英国残留でもEU問題はやっぱり解決しない S&Pのエコノミスト、P・シェアード氏に聞く

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「英国はEUに残留する可能性が高い。だが、本当の問題は別のところにある」とS&Pグローバルのチーフ・エコノミスト、ポール・シェアード氏は分析する(撮影:尾形文繁)
英国はEUから離脱するのか、それとも留まるのか。いよいよ6月23日に国民投票が行われ、ブレグジット(Brexit=英国のEU離脱)問題に判断が下される。投票結果はもちろん注目だが、その後はどうなるのか。S&Pグローバルのチーフ・エコノミスト、ポール・シェアード氏に聞いた。

 

結論から言えば、英国はEUに残留する可能性が高いと考えている。世論調査では離脱派と残留派が拮抗しているが、世論調査にはさまざまなバイアスがかかっているため、それほど信憑性があるとは思えない。この問題についてはむしろ、離脱のメリット、デメリットについてトップダウン的、論理的に考える必要がある。

まず、離脱することによるメリットはそれほど大きくない。英国はそもそもユーロ圏に加入していないため、EUを離脱してもユーロ離脱のメリットは得られない。シェンゲン協定では国境検査なしで移動することができるが、英国はこれにも加盟していないので、これも関係ない。

EU域内の自由な人、労働者の移動協定から離脱することにはなるが、離脱してもおそらく労働者の移動についてかなり容認することになるだろう。つまり、英国がどうしてもEUから離脱しなければならないような決定的なメリットは見当たらない。

離脱なら、不確実性に覆われた世界に突入

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反対に、離脱によるデメリットは短期的にも中期的にもたくさんある。ひとつは、不確実性が非常に高まることだ。現状では、離脱が何を意味するかさえ分かっていない。不確実性が高まると、当然投資意欲が薄れ、雇用にも跳ね返る。一般国民からすれば、現状維持か、もしくはまったくどうなるか分からない不安定な世界に足を踏み入れるかの選択肢となる。もちろん離脱に票を投じる人も何割か出るとは思うが、それが過半数を占めるとは到底思えない。

もしブレグジット(英国のEU離脱)が起きたら、不確実性の高まりによって、英国経済には負のショックとなるだろう。それに対し、金融緩和などの政策によって対応するだろうが、少なくともマーケットのボラティリティは高まる。いったん短期のショックを吸収したら、その後は長い様子見期間になるだろう。2年にわたる政府間の交渉に入るためが、非常に政治的なプロセスになるためとうてい2年では終わらない。日々ニュースは出るが、決定的な動きは出てこないだろう。

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