世界中が固唾を呑んで見守る英国の国民投票がいよいよ木曜日に迫ってきた。
筆者は残留派の追い上げを伝える世論調査が相次いで発表された6月10日と11日の両日、英国のロンドンを訪れていた。残念ながら、「英国が欧州連合(EU)に1週間当たり3億5,000万ポンド(約530億円)を支払っている」と糾弾する離脱派キャンペーン(Vote Leave)の赤いバスを目撃することはなかったが、現地の様子は日本で考えていた以上に熱を帯びていた。
テレビやラジオをつければ国民投票の特番が一日中流れており、一般市民までもが残留派と離脱派に分かれてそれぞれの主張を雄弁に物語っていた。英国人とのちょっとした会話の定番は天気の話だが、今回ばかりは誰もが国民投票の話で持ちきりだった。
このところの離脱派の追い上げについて何人かの英国人に尋ねたところ、離脱時の経済的なダメージに関する残留派(Britain Stronger in Europe)の警告をやや大袈裟なものと受け止める人が多いことや、新たな移民統計が発表され、移民問題が改めて国民の関心を集めていることが離脱派の追い風になっているとの回答が返ってきた。
残留派、離脱派ともEUには不満
離脱派キャンペーンのパンフレットを読むと、英国民が抱えるEUに対する不満が透けてみえる。
EUは近年その対象領域と加盟国を拡大している。選挙で選ばれた訳でもないブリュッセルの官僚が、様々な分野で各国の事情を考慮しない政策を一方的に押し付けてくることを問題視している。EU内ではヒトの移動の自由が保証され、新たにEUに加盟した旧東欧諸国から、豊かな英国を目指して移民が殺到する。EUからの移民を無制限に受け入れるのではなく、誰を何人受け入れるのかを自ら決めることを求めている。
また、EU予算に毎週500億円超も拠出するくらいならば、福祉、医療、教育予算など国内政策に充てた方が国民生活は豊かになると主張する。年間100兆円規模の英国の国家予算からすればEU予算の拠出額はそれほどの金額ではないが、度重なる歳出カットで行政サービスの質が低下していると感じる国民にしてみれば、途方もない無駄使いをしていると感じたとしても不思議ではない。
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