半導体事業の整理は3月末までに決着 富士通・山本社長に聞く

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ただ、中国やインド市場などで販売されている安価なスマホではなく、200~300ドルといった高価格帯で展開したい。各地域のキャリアと組んでサービスを提供するやり方になると思う。実際の取り組みは来年度以降だろう。

一方、今期のパソコンの出荷計画は700万台としているが、欧州を中心に採算を重視した方針に転換するため、達成は厳しそうだ。着地は600万台になるだろう。

タブレットは新規参入も増え、新たな市場が生まれている。富士通としては、コンシューマ向けというより、ビジネス向けに注力して伸ばしていく。最近の例では、生命保険会社の窓口の方がタブレット端末で決済できるようになっている。こうした提案は富士通の得意中の得意だ。勢いをさらに加速していきたい。

――マイクロソフト社の新OS「Windows8」は期待ほどではなかったとの声もあるが、富士通ではどうか?

Windows8は主にコンシューマ向けだ。量販店ではWindows7をさばくのに時間がかかったようだ。12月以降は8の比率が上昇してきたので、期待したいところ。一方で法人向けではWindows8は立ち上がっていない。今後は切り替えも進むとみられるが、やはりパソコンではタブレットをどれだけ拡大できるかが13年の課題だろう。

半導体産業が生き残ることはウエルカム

――半導体大手、ルネサスエレクトロニクスの救済策について、どうみているか?

日本国内に半導体産業が残ることはウェルカムだ。半導体は昨今のデジタル機器の心臓部。それを他国から買ってきてデジタル機器を作るというのは魂が入らないということに等しい。差別化された製品を作るためにはいいことだ。また、産業革新機構はどうかという点についても、日本の企業として生き残れる可能性が非常に高くなるため、前向きと言える。ただ、余計なことを言えば、顧客企業が投資することに関して、諸外国のベンダーから反発が出ることを懸念している。

――現在の為替水準をどう考えているか?

輸出型のビジネスの比率が大きいので、円安になればかなりの恩恵を受ける。しかし、企業としては、為替の円安傾向というより安定化が望ましく、安倍政権に期待したい。これは日本の産業界の競争力強化につながるだろう。

――クラウドサービスでどのように利益を生み出していくのか?

いちばん重要なのは新たなサービスを立ち上げていくことだ。農業や教育、医療、住宅などの分野でサービスを広げたい。継続して日銭をもらえるようなサービスを展開しなければならない。

今年は、タイやブラジルなどに行ってきた。富士通はブラジルで40周年を迎えた。実は、ブラジルにはかなりの先端技術が導入されている。基幹サーバーや手のひら静脈認証システムなど、海外でいちばん売れているのはブラジルだ。これは犯罪が多いため徹底的にIT投資を進めている結果。今後もますますチャンスがあるだろう。世界の中でIT化が進んでいる国はまだ3割程度に過ぎない。無尽蔵にビジネスチャンスはあるし、やっていかなければならない。

(撮影:尾形 文繁)
 

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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