さて、さんざん安倍氏についてぶつぶつ書いてきたわけだが、実は安倍氏をよく知る政治家からは氏の評判はいい。
たとえば、『東洋経済オンライン』で竹中平蔵氏は、ビジョンのあるリーダーだ、と語っている。実は韓国政府側で彼が官房長官時代に一緒によく働いた方からも、安倍氏は物腰が柔らかく、性格はとても優しい人だと聞いた。また保守派層が支持層なだけに強硬な発言もするが、彼は前回政権発足時、アジア外交の立て直しで現実的な行動をとった。当時は中国の新聞でも”安倍は賢者”とたたえられていたものである。
社会の右傾化が取りざたされる昨今だけに、保守派層の支持が厚いからこそ安倍氏ができることは多い。新首相がその戦略性と優しさ、そして思いやりを、自国だけではなく戦争の痛みが残っている方々や国際社会の友好のために発揮することが、日本の名声を高め長期的な国益に大きく貢献し、世界から尊敬される“日本を取り戻す”ことにつながるだろう。安倍氏自身が変わることで、日本が変わるのである。
今後に向けて3:民間交流を政治対立に潰させない
今回のコラムは大切な内容なので、書くに当たり、さまざまな人と相談した。その中で友人たちが大変意義深い話をしてくれたので、それを少し紹介したい。
韓国の政府高官で日本に長年滞在した方が、経済が疲弊して生活が苦しくなるとどこの国でもポピュリズム政治家が台頭するが、日本は超大国としての余裕と自信を忘れずに、それにふさわしい国際的リーダーシップで北東アジアの和合に必要な姿を見せてほしいとおっしゃっていた。
そもそも日中韓は元をたどれば最も近い関係で、アフリカで人類が誕生して他の大陸に渡ってきた常識を知っている人は、遺伝的に最も近い民族であることを知っているだろう。われわれは漢字文化や儒教および仏教を共有し、日韓の食文化や大衆娯楽を共に楽しむ共通の北東アジア文化圏にいる、という共通点にもっと目を向けるべきだと。
このとき聞いたエピソードで一番興味深かったのが、2005年日本と中国が歴史問題をめぐって緊張が非常に高まったときの経緯だ。当時、日中両国民の関係が極端に悪化し、実は両国の首脳が困っていた。そこで、前述の韓国政府高官が、日本の政府高官(その後首相にもなった人)と中国の政府高官をつなぎ合わせるべく、ご自身の趣味のテニスに誘ってコミュニケーションを図るのを助け、両国から非常に感謝されたとのことだ。今後も隣国である限りさまざまな対立や葛藤はあるだろうが、それでも政府の指導部間で密接な信頼関係を築ける人を指導者に仰ぎたいものである。
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