ついにアリババ株を売却した孫社長の胸の内 なぜ今、資産売却を急いでいるのか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ほかに考えられるのは、2月に5000億円の自己株買いを発表した際、「資産売却を加速する」としていた、孫社長の“有言実行”だ。

ソフトバンクは1億6700万株(発行済み株式の14%)、5000億円を上限に、自己株を2017年2月までに取得することを発表。そのための資金は「保有資産の売却や手元資金で充当する」と明記していた。今回の株売却は、自己株買いの資金について、保有資産の売却で手当てしたことを意味する。

ある格付け会社のアナリストは2月当時、開いた口がふさがらなかったという。「巨額の負債を抱えていながら借金を返済せず、まさか自己株買いを優先するとは……。ただ、今回の有言実行はプラス。『往って来い』で、格付けに影響はないが」。

ソフトバンクは手にする自己株を「消却する」とは明言していない。今後、株式交換による買収などで、自己株を活用することは十分ありうる。

孫社長にとっては、大したことではない?

つまり、今回売却したアリババ株やガンホー株はいったん自己株に化けるが、将来、新たな投資先の株へと、さらに化ける可能性がある。2015年11月の決算説明会で、孫社長もアローラ副社長も「年間数千億円規模の投資は恒常的なレベル」と語ったほか、5月にも「積極的な投資はこれからも続けていく」(孫社長)と強調しているからだ。

そもそもアリババへの出資は2000年だった。同社は2014年9月に上場したが、含み益はピーク時の10兆円超から6兆円台に下落していた。ガンホーも出資は1999年と古い。こちらも、スマホゲーム『パズル&ドラゴンズ』がピークアウトを迎えて、業績は苦しい。投資先の定期的な入れ替えという意味では、売却は遅きに失した感もある。

大きな注目を集めた一連の売却劇。だが、孫社長にとっては、投資家として、当然の合理的な選択をしたにすぎないのかもしれない。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事