イライラの感情がマイナスばかりでない理由 「敵視するか」「味方にするか」が明暗を分ける

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具体的には、通常ストレスに伴う反応として心拍数の増加と心血管の収縮が認められますが、ストレスを有用であると信じられた人たちには、心拍数の増加がみられたのみで、心血管の収縮は起こらなかったというのです。

これらの研究結果は、イライラをはじめとした心理的ストレッサーを含め、さまざまなストレスをどうとらえてどのように対処すべきか、ということについて、今までとはまったく違った新しい視点を与えてくれます。

つまり、イライラをただ単に敵視するのではなく、それは私たちに成長をもたらしてくれるものだ、というポジティブなとらえ方をしたとき、心身に起こる反応はマイナスからプラスに転じる可能性があるということです。

ポジティブにとらえると心身に起こる反応もプラスに

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プラスの思い込みによってストレスが心身に与える影響は良い方向に転じます。

その効果は強力で、乳糖やでんぷんなど薬として効き目のないものでも、本物の薬と思いこませて自然治癒力を引き出す「プラセボ効果」と比較されますが、プラセボ効果が短期的にある特定の効果だけを示すのに対して、思い込みの効果は本人の信念(スキーマ)などとも関連したより深いものであるため、長期的にさまざまな効果を発揮することができます。

皆さんが、イライラは成長の糧になる、と思いながら日頃より積極的に対処し、そのことが自分自身の実体験として腑に落ちたとき、この考えは信念のレベルにまで深まっていくことでしょう。

そしてそれは、あらゆる困難やストレスを乗り越えていく力=レジリエンスを大いに高めることに繋がります。

松村 浩道 江ノ島弁天クリニック院長

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まつむら ひろみち / Hiromichi Matsumura

1993年日本医科大学卒

ペインクリニック専門医
臨床ゲノム医療学会認定医
認定産業医
一般社団法人日本レジリエンス医学研究所代表理事
臨床ニューロフィードバック協会理事

全人的な医療を志す過程で東洋医学や補完代替医療にも精通。
ライフワークとして研鑽する大東流合気柔術では免許皆伝を印可。

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