ツイッターで成り立つ町がスペインにあった 用事があれば役所にメッセージ
フーン市では、小学校の給食の献立表までツイッターで送られてくるなど、市民生活のあらゆる側面にソーシャルメディアが入り込んでいる。このためこの町は、ソーシャルメディアが行政サービスの改善にどんな役割を果たすかを見極める実験台として、世界の注目を集めている。
とはいえ、フーン市の住民は、一夜にしてツイッターを活用するようになったわけではない。
わかりやすい行政サービスの依頼から
ロドリゲス・サラスが、副市長を経て市長に選ばれたのは2005年のこと。ツイッターが誕生する前の年だ。6年後の2011年、ロドリゲス・サラスは市職員たちに、ツイッターのアカウントをつくって、毎日の仕事をツイートしてほしいと頼んだ。副市長から道路の清掃担当者まで全員だ。
その狙いは、職員の仕事の説明責任を高めるとともに、町がどのように運営されているかについて透明性を高めること。フェイスブックではなくツイッターを選んだのは、ツイッターのほうが素早いコミュニケーションが取れると考えたからだ。
市職員たちは、市役所に来た住民たちに、自分のツイッターアカウントを確認してもらい(彼らのIDを見せれば簡単だ)、これからは懸念があったらそのアカウントにメッセージを送ればいいことを知らせた。
手始めに呼びかけたのは、インフラ整備などわかりやすい行政サービスの依頼だ。街灯が壊れていたり、道路の清掃が必要なときはツイートしてもらうようにしたのだ。
こうした手法は、住民との間に友好的な関係をつくったと、ロドリゲス・サラスは語る。おかげで最初はぱらぱらと増える程度だった利用者も、2013年以降は爆発的に増加。近隣住民がツイッターを使っているのを見て、自分も使ってみようと思った人が倍々ゲームのように増えたのだ。
市のIT責任者であるマリア・ホセ・マルティネスは、町のコミュニティセンターで、ダイレクトメッセージの送り方や、適切なハッシュタグの使い方を教える「ツイッター101」というクラスを開設している。
ロドリゲス・サラスによると、ツイッターを導入したことで、市役所の仕事は以前よりはかどるようになった。いまや住民が市役所にやってきたり、電話をかけてくることはほとんどなくなった。スペインの多くの町と同じように、フーンの財政も厳しい状況にあるから、こうした効率アップは重要だ。
ツイッターの導入で不要になった仕事もある。導入からほどなくして、フーンではそれまでいた4人いた警察官が1人に削減された。何か問題があれば、住民は直接市長にツイートするようになったからだ。「この町の警察官は1人じゃない。3500人だ」と、ロドリゲス・サラスは笑う。
