あの弁護士ドラマはどこまで「リアル」なのか

「現実にはありえない場面」を成立させる秘策

弁護士業務との境界をより明確に描き出すことで、パラリーガルとはどういう存在なのかが表現されているのも、このドラマの大きな特徴だ。刑事事件より民事事件のほうが、パラリーガルが業際を越えそうになる機会が多いため、描きやすいのだろう。

刑事事件は基本的に接見で対応するので、弁護士資格を持たないパラリーガルが接見に行くということはありえない。これに対し、民事事件では弁護士は依頼人から事情を聞き、依頼人に法的なアドバイスをする。その際、事情を聞く役割はパラリーガルが務めることもある。

ただし、事情を聞き取り弁護士に伝えるだけならセーフだが、法的な判断の範疇に含まれる発言はNG。大丈夫でしょうかと聞かれて、大丈夫ですと答えたらアウトだ。書面の作成についても、弁護士の指示通りに書面を清書するのはセーフでも、書面の起案自体をやってはならない。『グッドパートナー』では、そのあたりを巧みに描いているのが興味深い。

リアリティだけを追究すればいいわけではない

前出の山脇弁護士は、「弁護士による問題解決としては現実的にありえない手法や、弁護士の職務倫理上は許容されない手法が散見されることは確かだが、それを自覚した上であえてそうしていることがわかる」と話す。

たとえば、センシティブなセクハラ問題の被害者と加害者を、第三者が一堂に会する中で直接対決させたり、暴力団系の企業に弁護士自ら乗り込み交渉するという手法は基本的にない。また、同一事務所内の弁護士が、社長が代表する会社と、その会社の会長個人という、利益が相反する両当事者から受任することは職務倫理上問題になる。依頼者の秘密を依頼者の承諾なく外部に漏らす場面があり、これも問題になるが、「別の弁護士が『そんな方法はまずいんじゃないか』と突っ込むなど、登場人物に問題点を語らせるセリフが挟み込まれている」(山脇弁護士)という。

全体として、山脇弁護士は「各話で取り上げた法律トピック自体の本質は外しておらず、人間ドラマとして描く上で適したテーマを上手く料理しているし、弁護士の人間くさい一面も描かれている」と見る。

鈴木弁護士も、「ドラマの場合はリアリティだけ追究すればいいのではなく、制作側が描きたいことが描けて、かつ現実の法律実務との折り合いが付く対処方法を、選択肢を設けて提案するように心がけた」という。

鈴木弁護士がドラマの仕事を請け負うのは今回が初めてだが、コツは誰に教えられたわけでもない。「そもそも自分の専門である企業法務は、企業との長い付き合いが前提になる。コミュニケーションをとりながらクライアントが何を求めているのかをつかみ、満足度を上げていくことが必須条件。それはテレビの制作現場の人が相手でも同じ。現実と違うという指摘をしただけでは、テレビの制作現場は立ち往生してしまうと思う」。

「グッドパートナー」は本日6月16日(木)夜9時から、「99.9」は6月19日(日)夜9時から最終回が放送される。さりげない法律監修者の”苦心の跡”を探してみてはどうだろうか。

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