白川日銀総裁の再任というサプライズも
こうすれば、ターゲット導入という明確な形で、投資家の期待は実現し、また、その後、ターゲットを達成できない、という反動の失望を抑えることができる。同時に、投資家の中でも、今後起こりうる日本売りの材料、日銀の独立性への疑義というのも回避できる。
投資家の期待は身勝手で、今は、日銀にプレッシャーをかけることをもてはやしているが、それが実利をそれほどもたらさないとなると、逆のストーリーで襲い掛かってくる。
したがって、日銀法改正もするべきでない。これは波乱要因となるだけで、実利はない。投資家の逆襲の芽は摘んでおく必要がある。
現実的には、米国のような雇用目標を入れたければ、実質的に日銀が一つの目標だと表明すれば済むことだし、日本においては、失業率の数字は高くない、景気に対する感応度は高くなく、また遅行指標(景気の回復後に数字が上がってくる)であるから、妥当な数値目標にはなり得ない。
実際のところは、ほとんどの政策について、人事で影響を与えることができるから、日銀法改正はせずに、総裁、副総裁人事で影響力を発揮すべきだ。
そして、この人事は、あえて無難な人事をする。ベストは白川総裁を再任することだ。再任にもかかわらず、白川総裁の政策が変われば、「自民党政権になったら、白川さんは積極的になった」という市場の評価が得られる。
これで、安倍総理の評価は大きく高まる。人を替えれば、新しい総裁が注目を浴び、彼の手柄になってしまい、自民党政権による金融緩和という勲章がなくなる。したがって、政治的には、むしろ白川再任が賢い選択だ。
白川再任でなくとも、日銀出身者、あるいは無難な人選で、日銀を安心させることにより、信頼感を醸成し、日銀に緩和をより積極的に行わせる、という考え方が絶対的に必要だ。日銀は、経済に責任感がないわけではない。
まじめでプレゼンが下手で、政治的立ち回りが下手なだけなのだ。そこがバーナンキ(米FRB議長)との違いだが、これまで量的緩和、時間軸効果など世界で最もイノベイティブな中央銀行とも言われているから、むしろ自主的に緩和するように仕向けたほうが、うまく行く。北風よりは太陽が効果的だ。
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