改革後は発電競争力と小売り提案力が決め手 論争!発送電分離

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東電の破綻処理は適切な事業承継者がいないと困難

――東電を破綻処理し、所有権分離のモデルケースにすべきとの意見もありますが、どう考えますか。

破綻処理はやれるものならやってもいいが、いろいろなところで辻褄が合わなくなる。

1つには、破綻して法人格がなくなったときに、誰が福島事故の賠償や除染の負担をするかという問題が出てくる。また、法人格がなくなれば電気を供給する義務がなくなるため、誰が代わりに電気を供給する義務を負うのかが問題となる。銀行などの債権者は東電の燃料資産を差し押さえるだろうから、その状態で誰が燃料を調達して発電するかだ。東電は地域独占であるため、代替企業がない。そのため、事業継承者が適切な会社でないかぎり破綻処理は難しい。

さらに、原子力損害賠償支援機構が東電に出資した1兆円が破綻によって失われ、国民の損失となることが許されるのかという問題もある。やはり現状の処理スキームしか考えられなかったということだろう。

東電の送配電事業を分離譲渡するにしても、同事業の簿価である約5兆円を誰が出せるかが問題。国にはそれだけの財政的余裕もなく、送電網購入に5兆円を使う必要性があるかも疑問だ。

安倍新政権でも即座に全原子炉の再起動はない

――衆院選で自民党が圧勝しましたが、新政権のエネルギー政策について、今後の方向性や評価できる点、できない点をどう考えていますか。

新しい政治の枠組みでは、現実的な対応がなされるものと期待する。すなわち、ほぼ全ての化石燃料を海外から輸入し続けなければならない日本は、その輸入量を一部相殺するための原子力発電が必要だということだ。

自民党の政権公約には、全ての原子炉について3年以内に可否を判断すると明記されているが、新政権発足で即座にすべての原子炉が再起動してゆくわけではない。従来の政府方針である「原子力規制委員会が安全性を確認できた原子炉のみ再起動する」ことは、新政権でも変わらない。

新安全基準の骨子取りまとめは2013年1~3月、策定は7月の予定であるため、再起動は早くても7~9月期以降になると予想する。

もり・たかひろ●1976年生まれ。メリルリンチ日本証券にて造船・プラント、および電力・ガス・石油業界を担当する証券アナリスト。大阪大学医学部、同大学院医学系研究科修士課程修了後、2001年に野村証券入社、以来一貫してアナリスト業務に携わる。前職では医薬品・医療機器、食品・たばこ業界を歴任、07年より現職。日本証券アナリスト協会検定会員、同ディスクロージャー研究会電力・ガス専門部会委員。
中村 稔 東洋経済 編集委員
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