改革後は発電競争力と小売り提案力が決め手 論争!発送電分離

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――森 貴宏・メリルリンチ日本証券アナリストに聞く

「発送電一貫」「地域独占」「総括原価方式」で特徴づけられる日本の電力システム。より安価で安定的な電力供給を実現するためにはどう改革すべきなのか。さまざまな立場の有識者に意見を聞くシリーズの第3回は、電力業界を担当する証券アナリスト、メリルリンチ日本証券の森貴宏氏にインタビューした。

発送電「法的分離」なら債権債務の帰属に懸念

――アナリスト、市場関係者として電力システム改革の議論のどこに注目していますか。

市場関係者の視点は常に、収益がどうなるのか、配当が出るかということにある。今のところマーケットは、電力会社について原子力発電所の再稼働問題と電力料金の値上げが収益や配当にどう影響するかを織り込み始めたところで、システム改革など政府の政策でどうなるかはほとんど織り込んでいない。

システム改革の柱は発送電分離と小売り全面自由化だが、将来的に電力会社が発電事業と電力小売り事業でどう収益を上げていくかが第1の注目点となる。自由化されたマーケットで攻めにいけるかだ。送電事業については中立化されたインフラの位置づけとなるため、大きな収益事業としては考えにくい。

発電事業については、電源構成で有利かどうかが収益性のポイントだ。発電単価の競争力がキモになる。40年廃炉原則など原発の運転制限がある中では、高効率の火力発電所を持つことが有利。原発建設に制限があった分、火力を優先した中部電力が効率性で勝る。しかも今、中部電力は上越と西名古屋で火力の最新鋭電源を建設中だ。また、中国電力は大型の島根原発3号機が完成し、古くて小型の1号機に置き換われば電源構成が大きく改善する。

小売り事業については、顧客に魅力的なメニューを提示できるかどうかのアイデア勝負となろう。携帯電話のサービスと同様、料金の定額制や従量制、スイッチングコストの負担サービス、長期契約での割引制度など、多様なメニューが出てくると予想される。自由化の前提としては、需要家が使用量を把握するためのスマートメーターの整備が必要となる。

第2の注目点は、発送電分離によって債権債務の帰属がどうなるかだ。当面は社内カンパニー制の下でISO(独立系統運用機関)を使って送電部門の機能分離をするにしても、将来的には持株会社制の下で発電、送電、小売り各部門の法人格を分割(法的分離)することも予想される。そうなったときに、会社全体の債権債務をカンパニーごとにどう切り分けるかが、ステークホルダーにとっての大きな懸念材料となる。法的分離をするにしても、金融に対する影響を軽減するような施策が必要だろう。

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