改革後は発電競争力と小売り提案力が決め手 論争!発送電分離

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――発送電分離の中でも最も進んだ形態である所有権分離はどうですか。

所有権分離は現在の国内における議論の対象に入っていない。もしそれをやるならば、送電線などの分離した資産を誰が買い取るのか、その対価がいくらになるかが、ステークホルダーにとっての問題となる。

自由化でも発電の主役は既存の電力会社

――システム自由化によって競争はどこまで激化するでしょうか。

新電力は発電能力が小さいため、メインプレーヤーにはならないだろう。日本で火力発電所を造ることは、用地不足や環境規制の問題などから難しい。

発電量が大きくないと、燃料の購買力でも劣る。新電力は、電力会社や卸市場から電気を調達して販売する小売り業者としてはある程度の競争力を持つと思われるが、発電能力を持つ事業者としてのメインプレーヤーは今の電力会社のままだろう。

太陽光発電などの再生可能エネルギーの拡大については固定買取価格次第だが、国民経済的にコストが高くつくうえ、電力供給の潮流(安定性)を乱す要因にもなる。蓄電池の義務付けなど何らかの仕組みが必要だろう。

――東京電力が新規の火力発電所の入札を行っていることに伴い、台頭する勢力は。

今回の入札募集要項案は、複数の落札者から、大・中規模の電源を集めるような方式だ。判定価格が安い順に入札電源を積み上げ、合計260万キロワットに至るまでが落札者となる。そのため、必ずしも大規模電源を設置できる事業者だけでなく、小規模でも落札は可能だ。

ただし、価格優位性は大規模な石炭火力にあるため、燃料調達や用地などのインフラが整備された、製鉄会社などが優位と考えられる。また、東京電力の供給区域外にある電源によって応札することも可能だが、同じ50ヘルツ域内の東北電力管内以外は、送電時の電力損失が大きくなるため不適となる。

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