格安航空エアアジア、なぜ苦戦? 設立1年あまりで異例のトップ交代

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鳴り物入りでの参入だったが、当初目標とした搭乗率8割に対して、これまでの平均は65%程度にとどまるという。「シーゾナリティ(季節性)があるため、年間を通してみないと判断がつかない」(岩片氏)とするものの、格安運賃を特徴とするLCCは搭乗率を高めなければ採算が取れない。この搭乗率は当初想定していた以上の苦戦といえるだろう。

ネット販売のみで使い勝手も悪い

理由はいくつかある。来年1月からトップに就く小田切氏は「販売の仕組みが劣っている」と述べる。エアアジアの航空券はインターネット販売のみで「ウエブサイトの使いやすさなどユーザーフレンドリーな視点に立ったシステム的な改善が必要。決済方法の多様化にも対応する必要がある」(小田切氏)。さらに旅行会社を経由した販売などチャネル拡充も課題だ。

もう一つ、今後の事業拡大の上で課題となるのが、拠点としている成田空港の使い勝手の悪さだ。岩片氏は以前から、「成田で大幅に便を増やしていく上では、空港のコストが足かせになる。空港側のさらなる努力がないとムリだ」と主張している。

同空港の施設料は、マレーシアのエアアジアが拠点とするクアラルンプール空港の使用料金よりもかなり割高とされる。コストを徹底的に削り運賃に反映させることで、格安料金を実現するビジネスモデルのLCCにとっては大きな重しだ。さらに成田空港では、周辺住民への配慮から、飛行時間帯が午前6時から午後11時までと限られており、これも足かせとなっている。

7月就航した日本航空系のLCC、ジェットスター・ジャパンでは、整備に時間がかかるなどの要因で、成田空港に午後11時までに到着できなくなったことによる欠航が多発した。

小田切氏は、同日の会見で中部国際空港を第2の拠点にすることを検討しているほか、現在の3機体制の拡充や貨物便の参入にも意欲を示した。異例のトップ交代で、新鋭LCCを上昇気流に乗せられるか。新トップには難題が課せられている。

武政 秀明
たけまさ ひであき / Hideaki Takemasa

1998年関西大学総合情報学部卒。国産大手自動車系ディーラーのセールスマン、新聞記者を経て、2005年東洋経済新報社に入社。2010年4月から東洋経済オンライン編集部。東洋経済オンライン副編集長を経て、2018年12月から東洋経済オンライン編集長。2020年5月、過去最高となる月間3億0457万PVを記録。2020年10月から2023年3月まで東洋経済オンライン編集部長。趣味はランニング。フルマラソンのベストタイムは2時間49分11秒(2012年勝田全国マラソン)。

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