巨人・電通が抱くO2Oの野望(下) O2Oで進化するマス広告

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会員“未満”だった客を取り込める

たとえば、消費者が、PASSSSで発行したクーポンを利用して店舗でスーツを購入したとする。すると、そのクーポンが「次回来店いただくと、靴を20%オフで提供させていただきます」という内容の新しいクーポンに置き換わるのだ。

店舗側は、個別の消費者の来店回数や購入履歴に応じて、クーポンを再配信できるようになる。先述したとおり、一般的なクーポン施策は主に新規顧客向けに行うものだ。それが、繰り返し店舗に足を運んでもらうための施策を実現できるようになるのだ。

電通デジタル・ビジネス局メディア企画部でアート・ディレクターを務める吉羽一高氏は、Passbookの可能性を次のように語る。

「お店にとって、消費者に会員登録をしてもらうことは簡単なことではない。消費者は、来店頻度が少ない店舗ではわざわざ会員になろうとしない。PASSSSを利用すれば、中間のアプローチができる。今までクーポン施策はやっていたが、会員登録まで消費者を持っていけなかった、という店舗に向いている」

Passbookは、単なる“クーポンツール”ではない。消費者と店舗との関係づくりに利用できる“コミュニケーションのツール”になる可能性を持っているのだ。

一般消費者向けサービスとしては「PassBank」を用意

電通は、企業向けのPASSSSと同時に、消費者向けには、「PassBank」というPassbookのクーポン、チケット等を一覧で確認できるサイトを提供している。消費者は、Passbankにアクセスして、現在発行されているクーポンを確認し、取得できる。

PASSSSは、無料版と有料版を用意する予定だという。企業だけではなく、一般の人でもクーポンを発行できるように無料版を提供。

有料版では、月額1万円くらいから利用できる。電通のクライアントは比較的大企業であるようなイメージが強いが、PASSSSでは中小企業でも導入しやすい価格を設定している。

「戦略的に低価格にしている。ベンチャー企業と競合しても十分に戦える価格だと思う。電通のクライアント向けでも、おそらく数十万円くらいのレベルから用意する。環境を作る、広める、ということを重要視しての戦略だ」

と、電通デジタル・ビジネス局メディア企画部の澁川修一氏は話す。

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