稼げるフィナンシャルプランナーの条件 【キャリア相談 Vol.3】

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一方でFAは頻繁に商品を売買してもらえると儲かりますし、新しい商品を紹介すればすぐに興味を示す顧客は、FAや金融機関にとっては良い顧客といえます。ここにおいて両者のインセンティブが合致しないこととなります。金融マンでも自分の資産はETFと外貨預金で寝かせていたりするものです。こうしたFAと顧客のインセンティブのズレを埋めるには商品提供以外の専門的なアドバイスで付加価値をつける必要があるかもしれません。このことについては後ほど説明します。

FAのビジネスで収益を上げるには、釈迦に説法ですが、1)顧客を増やすか、2)顧客1人当たりの取引頻度を上げるか、しかありません。たとえば、数百万円の資産を持つ顧客の取引頻度を上げるより、数億円以上の資産を持つ顧客を新規獲得する方が手数料は上がる可能性があります。

すると質問者の方が収入を上げるには、今のスキルを生かして、より資産規模の大きい顧客を狙うことが考えられます。つまり営業力に強い自信がある場合や、すでに大きな顧客を持っている場合、現在の勤務先より歩合の大きいプライベートバンクに移って稼ぐことが考えられます。

業界にいればご存じのように、日本では金融資産10億円以上の顧客をターゲットとするような外資系のプラベートバンク(PB)が根付いたとは言えず、外資系PBには常に撤退やリストラの可能性があります。また、PB内でもプライベートバンカーがそれぞれにがっちり顧客を掴んでおり、競争は熾烈です。となると、無理して短期的な稼ぎを優先するより今の会社に残った方が良いかもしれません。

個人向けから法人向けへのシフトも

また余談ですが、プライベートバンカーの次の段階として「ファミリーオフィス」の運営というものがあります。これは資産家の資産管理を職業とすることです。世の中にほとんど知られていませんが、日本にも存在します。

この場合は株式、債券、金といった投資対象のみならず、不動産や保険、一族の教育資金まで管理をすることとなります。もしもスーパー顧客を持っており、広範な金融知識と信頼を持っているとこんな職業もあります。私の友人でも金融機関を辞めたプロフェッショナルがこうした業務をやっていますが、一般的にはなかなかレアです。

現実的にはFAの次のキャリアとしては、「南極で冷蔵庫を売る」レベルの営業力があれば、リテールから法人に顧客を変え、機関投資家向けセールスになるか、たとえば商品を変えてみて歩合の大きな外資系保険会社に勤めるといったことも考えられます。証券会社でも営業力を武器にリテール営業から法人営業に移る人はいるものです。

ただ株式部門はどこも業績が厳しく、機関投資家向け営業において取引執行は電子化され、手数料も年々下がり、人間の介在する余地はどんどん少なくなっており、単純な株式のような商品の売買では付加価値をつけにくくなっているのです。日本法人向け営業であれば、ほかでは買えない海外のヘッジファンド商品等でないとなかなか厳しいでしょう。

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