サムスン3代目の経営手法に「注文」が殺到

韓国の経営学者5人の採点簿は?

2015年、サムスン電子が消費者家電部門において5500人の人員削減を行うなど合理化を始めた。こんな合理化こそ、サムスンにおける創造や革新にとってネックとなりうるという指摘もある。シン・ドンヨプ教授は「創造的なファーストムーバー」になるという宣言と費用削減への努力は相反する部分がある、と指摘する。人員削減こそが、組織文化に悪影響を与えうるということだ。

シン教授は「人員削減は価格競争力を高めるための原価削減には役に立つが、李副会長が宣言した創造と革新をやろうとすれば、社員たちが自発的に仕事に邁進し、情熱を持てるようにすべきだ。いつクビを切られるかわからないと考えている彼らが、人員削減が進みながら、仕事に邁進できるだろうか」と言う。

価格競争は典型的なファストフォローワー戦略にすぎない。人員削減で用意できたキャッシュを研究開発に投資すれば革新的なこともできるのではと反論したら、シン教授に「それこそ、典型的な製造業時代の考え方」と一蹴された。

遠大なビジョンを共有できるリーダーになれ

李在鎔副会長がグループ全体に遠大なビジョンを提示し、少しでも積極的に共有できるようにすべき、との注文も出た。李副会長自信も、グループ全体のビジョンを描いてリードするリーダーであるべき、ということはわかっているようだ。自ら指揮して販売させた最初のスマートフォン「ギャラクシーS6」は、かつて「李在鎔フォン」との別名が付いた。

だが、それを聞いた李副会長は「別名が付くことは、私の仕事ではない」と反論したとの証言がある。「日常の業務は副社長や専務に任せ、社長団は3年後、5年後の経営を考えろ」と言ってきた李健煕会長のリーダー論を、李副会長が引き継いだのではないかという分析だ。

ソン・ジェヨン教授は特に、「李在鎔副会長は短期的な成果に執着すべきではない」とクギを刺す。「李健煕会長のリーダーシップを学ぶべきだ。サムスンが1990年代からグローバル企業になったのは、李会長の役割がとても大きい。李会長は出社はそれほどしなかったが、その代わりに、世の中をどう変えるかをいつも考えてきた人だ。日常的な決定は専門経営者に相当部分任せていた。サムスンがどの企業集団よりも専門経営者システムが発達した理由も、李会長が小さなことにこだわらなかったためだと思う。大枠と方向性だけを設定し、オーナーの見方で長期的な投資が必要な領域や事業は何かを、いつも考えていた」と紹介する。

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