新築マンションの9割が「欠陥マンション」だ なぜマンションは完成前に販売されるのか

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マンションのように大規模な建物の場合、多いケースで約30社もの業者が関係する工事もあるほど。しかも実際に施工するのは下請け・孫請けの業者になります。そこで働くのは「職方」と言われる日給月給の請負労働者。多くの企業がかかわる仕事でそれぞれが利益を抜いていったら、彼らに支払われるのはかなりの薄給であることは想像に難くないと思います。しかも、建築業に携わる現場労働者は340万人といわれますが、そのうちの3割、100万人程度は社会保障未加入で、有給休暇も取れません。

こうした絶望的な状況で働かざるをえないとなると、よりいい仕事をしようとか、どんなに時間がかかっても丁寧な作業を心掛けようという意識は生まれにくいでしょう。しかも東日本大震災以降、ベテラン職方が次々と離職しており、未熟な職方が増えているという問題もあります。

「パークシティLaLa横浜」では、手すりに生じた「ずれ」により、杭の施工不良が発覚した

欠陥につながる重要な問題はまだあります。「工期厳守のプレッシャー」です。日本の分譲マンションは「青田売り方式」で販売されるのが一般的で、建物が竣工(=完成)する前、場合によっては工事が始まる前に販売が行われるケースもあります。

このように物件がまだ完成していない状態で販売が行われるのは、事業主の資金繰りが原因です。マンションのプロジェクトに要する資金は、そのほとんどを金融機関からの借り入れで調達しますが、竣工までに売り切ってしまえば、引き渡し後すぐに資金回収ができ、金利負担はその段階までしか発生しないので、事業計画として成り立ちやすいのです。

米国では「実物を見せて販売」が常識

しかし諸外国ではそうではありません。たとえば米国では建物の基本部分ができてから、実物を見せて販売を行っています。「建設工事は完成予定より遅れることもある」という前提に立っているからです。しかし日本の現状では、一度、工事請負契約を締結したら、工事の延期はご法度。そうなると、工期を優先するあまり、現場管理が手薄になり、その結果、ミスが発生しやすくなります。

この2つの要因以外にも、ゼネコンの大事な役割のひとつである「管理」、そして工事監理者(設計事務所に所属する一級建築士で、マンションの設計者)による「監理」がきちんと機能していないことなども絡み合い、さまざまな施工不備や欠陥が生まれてしまうのです。

『新築マンションは欠陥が9割』とタイトルにありますが、これは決して誇張ではありません。もっと言えば、私が今までに検査したマンションでは、ほぼ100%、なんらかの不備や欠陥が見つかっています。これが現実なのです。そして欠陥があった場合は、そのマンションの価値は確実に下がるどころか、場合によっては全住民で補修工事の費用を負担しなければならないケースも出てきます。

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