ソフトバンク、「アリババ株4%売却」の舞台裏 なぜ、このタイミングで初の売却を行うのか

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孫社長は2000年、創業2年目のマー会長と中国で面談し、5分で出資を即決。「1億~2億円なら」と話すマー会長に対し「20億円、なんとしてでも受け取ってくれ、おカネは邪魔にならないだろう」と押しつけた。

それから16年。ソフトバンクは追加出資こそすれど、アリババ株を1株も売却したことはなかった。2014年9月にアリババがニューヨーク証券取引所に上場した際も、孫社長は「売る意思はない」と明言していた。

目下のところ、ソフトバンクの手元資金は潤沢で、個人向けを中心に社債による資金調達も進めている。それなのになぜ、このタイミングで手放すのか。ソフトバンクは「以前からアリババとともに、アリババ株に転換される金融商品の組成を交渉しており、この話がまとまったタイミング」と説明する。

スプリントの支援が当初の目的だった?

しかし、同時に、孫社長は「アリババの前途には壮大な成長機会が広がっている」と従来からの主張を繰り返してもいる。ならば、手放さないほうがよさそうなものだ。

スプリントは孫社長が自らネットワーク改善を陣頭指揮し、久々の黒字化を果たした

背景には、傘下の米国携帯大手・スプリントの不振があった可能性が高い。スプリントは長らく経営不振に喘いでおり、今回の金融商品の組成を議論している時期も(いつから議論していたかは公表していないが)、先が見えない状況にあったはずだ。これまで、ソフトバンクはスプリントへの直接融資をしてこなかったが、最悪の事態を想定し、あらゆる手段でスプリントに投じる資金を集めようと考えていたのではないか。

その後、スプリントは2016年3月期に9期ぶりの営業黒字化を果たし、端末のリース販売への転換を進めるなど、キャッシュアウトの拡大にも歯止めがかかった。スプリントの改善は進んだものの、金融商品の組成の話もかなり進んでおり、今さら取りやめるわけにもいかなかった――。これが今回の売却の真相なのかもしれない。

アリババ株について、ソフトバンクは今後6カ月間、ロックアップ期間に入る。追加の放出を制限し、株価下落を抑えるためだ。裏を返せば、6カ月が経てば、アリババ株を追加で手放すことが可能だ。

しかし、追加の放出はあるのだろうか。アリババ株の含み益は一時期の10兆円超から徐々に減少し、銀行から借り入れる際の「殺し文句」としての迫力はやや失われてきている面もある。とはいえ、アリババ株がソフトバンクにとって金の卵であることに変わりはない。現時点では、これ以上手放す可能性は高くなさそうだ。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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