中国人留学生が米国でハマる「不正行為」の闇 教育制度の隙を突く成績偽装が横行

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不正行為サービスはアイオワ州以外にも広がっている。たとえばワシントン大学、アラバマ大学、ペンシルバニア州立大学でも、今学期、学生のもとに匿名の業者から中国語での宣伝メールが送りつけられた。

その業者に代理出席や宿題代行を依頼すれば、成績の平均評点を引き上げ、早期に卒業できる、という宣伝文句だった。ロイターがその広告を確かめたところ、返金保証制度も設けられていた。「A」評価を取れなかった学生は返金してもらえるという。

安易な選択

こうした市場には大きなポテンシャルがある。国際教育研究所によれば、現在、学位取得を目指して米国で学ぶ外国人学生は約76万1000人である。その3分の1が中国出身だ。米商務省の統計では、2014年に中国人学生が米国で学費及びその他の財・サービスに費やした金額は、約100億ドルに達している。

もちろん、中国人学生がすべて不正直であるわけもなく、米国人学生も不正行為の誘惑とは無縁ではない。だが中国人学生にとっては、見返りが極端に大きいだけに、ルールを破ろうという誘惑は強い。

中国国内にある大学の入学資格は、そのほとんどが「高考」と呼ばれる競争の激しい全国統一入学試験を通じて与えられる。何年にもわたる不眠不休の準備が必要な試験である。

中国の親たちのあいだには、自分の子どもにはこんな苦しい経験をさせたくないと考える人が増えている。米国の大学はもっと進学しやすく、教育の質は高く、よい仕事に就ける可能性も高い。

こうした学生を成功させるため、支援業者はさまざまな角度から米国の高等教育システムの弱点につけ込もうとしている。大学としては、こうしたサービスを利用する志願者を厳しく選別するには大変な苦労が伴う。その理由を、1人の学生の例から見ていこう。

中国本土でも香港に近い深セン市(人口約1100万人)で生まれたXhuan Claren Rongは、高校時代の一時期を米国で過ごした。2011年9月、マサチューセッツ州グランビーの寄宿・通学併設のマクダフィ高校に9年生として編入したのである。

マクダフィ高校のスティーブン・グリフィン校長は、「真面目で勉強熱心な生徒に見えた」と言う。残念ながら「成績は学年のなかでも中程度」と同校長は記憶している。「家族にとっては、それでは不十分だったようだ」

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