苦手意識は損!役に立つ「物理」3つの勘所 インチキ、ウソにだまされない

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③身の回りの自然現象や技術を正しく理解できる
~なぜ送電線を高圧にするか子どもに説明できますか?

 

送電時、電線の抵抗により電気エネルギーの一部は失われます。この損失の大きさは電流の2乗に比例して大きくなります。電線の抵抗が変化しない場合、電圧を一定にしたまま電流を増やせば損失は増えますが、電流が一定であれば電圧をいくら上げても理論的には損失は変わらないということになります。

電力=電圧×電流なので、電力が一定なら、送電損失は電流が大きくなると増え、電圧が高くなると減ります。大電力を送るときは電流をできるだけ小さくし、電圧をできるだけ大きくすることで損失を減らせます。

つまり、送電損失は電線を流れる電流によるものです。ですから、電力を消費する送電線には低い抵抗のものを使います。しかし、それでも抵抗をゼロにすることはできないので、長距離を送電するとかなりの抵抗になってしまいます。そこで、送電電圧を高くして送電線に流れる電流をできるだけ小さくし、送電線の抵抗による損失の影響を小さくしています。

送電損失を単に法則から導かれた公式で計算して求めるだけでなく、送電損失に関係する電圧・電流・抵抗などの物理量を正確に分類することで「どうして送電損失が起こるのか」を正しくイメージすることが大切です。

物理の概念や法則をイメージ豊かに正しく分類

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日常で使われている電化製品をはじめ、医療・情報通信機器などの多くは物理の法則を基にして技術開発されたものです。営業や販売の職に就いている人でも、中学校から高校初級レベルの物理概念・法則の知識があるとよい場面はたくさんあります。

しかし、物理の知識は高校受験後には忘れてしまい、高校1年で物理の力学分野を少しやったきりで、「物体の運動の公式が難しかった」という記憶だけが残っているだけかもしれません。

ここで高校レベルの物理を学ぼうと決意して、高校生向けに販売されている高校物理の参考書を読んでも、難しすぎてなかなか1人では理解できないことが多いでしょう。また、雑学本は、いろいろな物理の知識が増えても断片的な知識で終わってしまい、本質的な物理概念の理解には至らないことが多いです。

そこで提案したい勉強方法は、まず中学校レベルからスタートして、図解を利用したイメージから物理の基本を理解することです。このときは、最初から物理の公式を問題演習から理解するのでなく、物理の概念・法則の意味することをイメージしながら、自然現象の本質を把握することです。

また、物理の公式が理解できない場合には、もう一度モデルなどのイメージから物理の概念や法則を正しく分類して再確認することが必要です。その後に、物理の問題演習が物理の世界を知ることとセットになれば、自然現象をもっと深く理解でき、楽しいものになることでしょう。

浮田 裕 兵庫県立星陵高等学校教諭

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うきた ひろし

1959年、兵庫県生まれ、甲南大学理学部卒。甲南大学大学院自然科学研究科物理学専攻修士課程修了。現在は兵庫県立星陵高等学校教諭。

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