パワハラリスク低減 虎の巻 あなたの会社は大丈夫?

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労働者の「心」の健康も守らなければならない

3 就業環境配慮義務・安全配慮義務違反(労働契約法5条ほか)

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をする義務を負っています。「生命・身体等の安全」には、労働者の心身の健康も含まれますので、労働者が過労死した場合やうつ病により自殺した場合でも、使用者に安全配慮義務違反があったと認定されれば、会社や上司は、従業員が死亡したことに対する損害賠償責任を負います。

従業員がパワハラを受けた場合、直接関与してない会社や上司に損害賠償責任が認められるかどうかは、個別の事実関係の下で、3つの観点から判断されます。

会社や上司に①当該パワハラの発生を予見できたか、②パワハラ防止策を実施していたか、③パワハラ防止策を実施していなかったことと当該パワハラの発生の間に因果関係があるか、という判断基準が適用されているようです。

したがって、会社や上司としては、このようなパワハラ防止策を実施しておくことにより、直接関与しないパワハラ等に伴うリスクを軽減することができます。

パワハラ予防策3策

一般的に、パワハラを予防するためには、以下のような対策が有効だと考えられています。

1.調査義務の履行

(1) 従業員アンケートの実施…職場環境に潜む問題点を把握する。

(2) 相談・苦情窓口を設ける…パワハラが起きた場合、迅速に把握する。

2.環境整備義務の履行

(1) 会社トップの意識改革

(2) 講演会や研修会の実施による従業員の意識改革

(3) 就業規則や社員の行動基準にパワハラ概念を盛り込む

3.再発防止義務の履行

(1)研修の実施

(2)加害者に対する懲戒処分

(3)被害者に対する職場復帰支援

パワハラはセクハラとは事なり、会社側に対して具体的な防止対策が定められていません。ですが、パワハラとセクハラについて、会社・上司が責任が責任を問われる構造は同じです。会社・上司としては、定められている防止策を理解し、しっかり対応しておく必要があります。次回は、セクハラ防止対策について、見ていきましょう。

鍛治 美奈登 弁護士

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かじ みなと / Minato Kaji

第二東京弁護士会所属。
05年 中央大学法学部国際企業関係法学科卒業、07年 中央大学法科大学院修了後、司法試験合格、08年 弁護士登録。

一般企業法務、一般民事事件、医療過誤、刑事事件等の幅広い業務を手掛けている。主な著書は、「新・労働事件法律相談ガイドブック/共著/第二東京弁護士会」や「くらしの法律知識Q&A/編集/清文社」等がある。

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