塩野:なるほど。ポジショニングの話に戻りますけど、「東大出身」であることを見え隠れさせるのであれば、"ダークな池上彰さん"なんてどうですか。時事ネタをダークに解説していく。トランプが大統領になるかもしれない時代なので、ネタはいくらでもあると思います。
石井:ダークですか……。私、下ネタは好きですけど、ブラックネタはあんまり言わないんですよ。それに賢いこともしたくないというか……。
「東大、マッキンゼーなのにこんなバカなネタやるんだね」っていうところをずっと目指していたんです。高学歴なのに、全然知的じゃないネタをやっている、というところに行きたくて。「東大出て何してんねん!」みたいなことを突っ込んでもらうのがいちばんうれしい。でも、なかなか売れない。ということは世の中の需要はそこにないのかもしれませんが。
以前、韓国の少女時代のコスプレをして、「短足時代」ってネタやっていたんです。それは、もう東大であることを一言も言わないですし、インテリの要素もゼロ。けど、ライブでもドッカンドッカン受けた。すごいファンも増えました。
でも結局、テレビに出られるクオリティではなかった。実は売れていない芸人であっても、みんなめちゃくちゃ面白いんですよ。ネタを見るとそれぞれ面白い。でも、それだけじゃテレビに出られない。「何が足りないんだろう?」って考えたときに、面白いだけじゃなくて、その人にしかできないこと、代替性の低さと、今まで見たことない感じというのが、絶対に必要なんですよね。
塩野:要するに、かぶっていない感ですよね。
大切なのはかぶっていない感
石井:そうなんです。かぶっていない感です。これが、絶対に必要なんです。テレビに出てネタやるという意味では。短足時代はアイドルのパロディで踊りも入れていたので、「キンタローさんっぽいね」ってすごい言われたんです。だからテレビに出られなかったんだな、と自分では分析しているんです。
ダークな池上彰さん――。テレビに出るためだったら、こういうことをしたらいいぞ、というアドバイスは本当によくわかるんです。でも、やっぱり心がついていかないことはしたくない。私は、だから「中途半端」って言われ続けています。
塩野:純粋にネタで勝負をしたい、ということですよね。だったら東大であることは前面に出さず、ネタそのもので売ったほうがいいかもしれません。後で何年か経って「あの人、実は東大の理系みたいよ」みたいな。
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