JTBの危機感「航空券・ホテルの枠を押さえろ」 連続成長のためには予約枠の確保が課題に

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一方で、業績予想の未達となった要因は、海外旅行の不振だ。パリやブリュッセルで相次ぐテロの影響によって、採算のいい欧州向けのツアーが低迷。個人・法人ともに前年割れとなり、粗利ベースでは100億円近い減益要因となっている。

今2017年3月期の見通しについては、売上高1兆3800億円(前期比2.7%増)、営業利益200億円(同23.9%増)を見込むとしている。海外旅行の落ち込みが一巡することで、大幅な増益となる見通しだ。

JTBは決算と同時に、「躍進2018計画」という中期経営計画を発表した。重点強化テーマとして、①訪日インバウンド、②仕入改革、③事業開発という、3点をあげている。さらに最終年度の2019年3月期には売上高1兆3940億円、営業利益345億円を目指す計画も掲げた。

仕入れ改革が最大のテーマ

そのなかで、高橋社長が厳しい口調で語ったのが、②の仕入改革というテーマだ。インバウンドの急増で、東京・大阪・京都といったゴールデンルート沿いのホテルの予約が獲りづらくなっていることに加え、航空券や貸切バスも押さえることが難しくなっている。

さらに、日本人の海外旅行客が3年連続で減ったことも、「(仕入れへの)プレゼンスが下がっている」(高橋社長)と、危機感を募らせる。旅行会社はパッケージツアーの主催にあわせて、ホテルや航空会社に対して、一定量を予約枠として押さえている。海外旅行をする日本人が減れば、その分だけ予約枠も減らされる。

5月27日に国土交通省で半期に1度の決算会見を行った高橋広行社長(記者撮影)

高橋社長が「仕入れを制するものが営業を制する」と現場に檄を飛ばすのは、予約枠が減れば、商品企画にも影響し、最終的には売上高に響いてくるからである。

そのため、こうした「予約枠の買い取り、チャーター便の運行に加えて、資本業務提携など、リスクを取った仕入れをしていく」(高橋社長)方針だ。

売上高で1兆円を超えるJTBだが、営業利益率はほんの1.2%に過ぎない。インバウンドをめぐっては海外の旅行会社との顧客獲得競争に加えて、エクスペディアなど巨大なオンライン予約サイトも台頭している。厳しい競争を勝ち抜くために、他社との差別化に磨きをかけ、一層収益性を引き上げることが課題といえそうだ。

 

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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