JTBは世界の観光需要を取り込んでいく 髙橋広行・JTB社長に聞く

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たかはし・ひろゆき 1979年、関西学院大学卒、日本交通公社(現JTB)入社。高松支店長、JTB西日本社長などを経て、2014年6月から現職。

日本を訪れる外国人観光客(インバウンド)の拡大で潤う旅行業界。JTBはネットと店舗の相乗効果で取り扱いを増やしており、海外各地でM&Aも加速させている。6月に就任したばかりの髙橋広行社長に、今後の戦略を聞いた。

──海外からの観光客の増加をどう見ているか。

ビザの緩和が大きい。昨年のタイやマレーシアに続き、インドネシアの免除も視野に入る。ホテルや旅館も本腰を入れ、国と民間の連携で年間1000万人を達成できた。インバウンドも国内旅行に変わりはなく、国内宿泊市場が拡大する可能性がある。

──近年、JTBは「地域重視」を標榜してきた。

全国800店舗のJTBは従来、地域の客を旅に連れ出す営業が中心だった。2006年に地域ごとに分社化し、地域を訪れる客へのサービスにも力を入れる営業スタイルに転換した。日本の各地が潤ってこそ、海外旅行にも行く気になる。

──宿泊予約はネット専業の躍進が著しい。

われわれはウェブやコールセンターと連動した「クロスチャネル」で販売を推進している。宿泊だけならネット予約が便利だが、旅館での過ごし方などを相談できる機能は店舗にしかない。

昨年の宿泊販売3850億円のうちウェブ販売は1000億円で2ケタ成長したが、店舗での販売も他社のシェアを食って伸びている。

──海外のM&Aが多い。

日本発着だけでなく「世界発着」でビジネスを考えている。7月に出資したスペインの旅行会社は南米に強い。シンガポールでは富裕層に強い会社を買収した。ブラジル合弁も16年のリオ五輪需要に加え、北米をにらんだものだ。

今後は海外が伸びていく。従業員2万6000人のうち海外旅行担当は4700人で、陣容は拡大している。採用にもグローバル枠を設けた。主要市場に幹部を送り、現地従業員を指導している。将来は現地出身のトップが各市場で誕生するはずだ。

──20年には東京五輪が開催される。インバウンド拡大に向けた課題は。

政府が目標とするインバウンド2000万人に向けて、訪日客が訪れる地域と時期の分散が大切だろう。

すでに東京や大阪、京都でホテルの予約が取れない。当社はリスクを取って、年間で国内ホテルの部屋を買い取ったり、航空機やクルーズ船のチャーターを増やす。USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)とは関係を深め、15分早く入場できる特典など、有利な条件を手に入れた。全世界の拠点が地域と一体で観光事業を行うことで、独自性、競争力のある商品を開発していく。

(撮影:今井康一)

「週刊東洋経済」2014年8月2日号<7月28日発売>掲載の「この人に聞く」を転載)

山川 清弘 「会社四季報オンライン」編集部 編集委員

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やまかわ・きよひろ / Kiyohiro Yamakawa

1967年、東京都生まれ。91年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。東洋経済新報社に入社後、記者として放送、ゼネコン、銀行、コンビニ、旅行など担当。98~99年、英オックスフォード大学に留学(ロイター・フェロー)。『会社四季報プロ500』編集長、『会社四季報』副編集長、『週刊東洋経済プラス』編集長などを経て現職。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト。著書に『世界のメディア王 マードックの謎』(今井澂氏との共著、東洋経済新報社)、『ホテル御三家 帝国ホテル、オークラ、ニューオータニ』(幻冬舎新書)など。

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