教育の大転換「高大接続」を知っていますか? 一大構想とその課題を丸ごと解説

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具体的には、たとえば、大学入試に向けて、高校生たちは必死になって歴史の年号を覚えたりするが、大学に入ってから、社会に出てから、それらの知識が求められることはほぼゼロだ。大学では、たいていの場合、情報を丸暗記するより、確かな情報の調べ方を身に付けるほうが重要だ。

「漢委奴国王印」という金印のことを、日本史で習ったことがあると思うが、ある入試では、この金印を見つけた百姓の名前が問われたことさえある。答えは「甚兵衛」だが、それを知っているからといって、何かの役に立つとは思えない。

最近では、大学入試における難問奇問の類はだいぶ減ってきたとはいえ、依然として、記憶力の良し悪しが、合否の決め手になってしまう状況は続いている。

ペーパーテストで測ることができる能力はどうしても限られてしまう。社会に出て必要な能力は暗記力だけでは当然ない。そこで、大学入試時に、志望理由書、ポートフォリオ(学びや経験の履歴書)、面接などを入試に取り入れることで、人物をもっと多面的に評価する、という流れがいま教育界で出てきているのだ。

入試がこのように変われば、高校教育は知識の詰め込みからおのずと変わる。大学に入ってからもその流れで学び続けることができる。

こうして、これまで切れ切れになっていた高校教育、大学入試、大学教育を、1つの流れの中で結びつけようというのだ。

日本の最先端は、米国の一般常識

ただ、日本ではようやく最終報告が出されたばかりで、改革はまだ現実のものにはなっていない。理想論として、実現を危ぶむ声すらある。

しかし、実はこれらは、米国ではすでに普通に行われている。たとえば、米国の大学入試はこうなっている。

・マークシートと記述式併用の統一テスト(SAT、ACT)で、基礎学力を測る。
・テストスコア、学校の成績、志望理由書、活動実績などをオンラインフォームに入力し複数大学に一括提出する。
・大学のアドミッションオフィサー(専門職員)が、受け取った情報をもとに学生を多面的・総合的に評価し、自大学に迎え入れるべき学生を選ぶ。
・大学によっては、アドミッションオフィサーが絞り込んだ候補者の情報を教員に共有し、合否を決定する。

 

また、米国の高校教育では、日本にはない制度がある。AP(Advanced Placement)というプログラムだ。大学の教養課程の授業を前倒しする形で高校で受けることができる。そして、大学進学後の単位に換算されるという制度だ。APの成績と修了数は、もちろん、大学入試の評価対象になる。

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