新総裁はカナダ人 英中銀の大胆人事

初の公募の総裁人事が発表

公募のプロセスを逸脱?

BOE次期総裁として抜擢されたカーニー氏はまだ47歳と、64歳のキング氏から大幅に若返る。経歴も非の打ち所がない。米ハーバード大学卒でゴールドマン・サックスに10年以上勤めるなど、民間での経験が豊富なうえ、中銀総裁としての政策運営にも定評がある。さらに2011年には欧州中央銀行総裁となるドラギ氏の後を次いで、国際的な規制・監督の議論を行うFSB(金融安定理事会)議長の要職に就任。規制や監督の議論で主導的な立場を維持したい英国にとって、FSB議長という肩書も魅力的だったはず。オズボーン財務相は「完璧な候補者」と絶賛した。同日、副総裁の再任も発表し、経験豊かな人材が新総裁の脇を固めるメッセージも打ち出している。

電撃発表を受けてカナダで会見を行ったカーニー氏は、「重要かつ重大な役割を引き受けるのはとても光栄。新たな挑戦を楽しみにしている」と意欲を示した。ただ、任期途中だけに、「何があなたの気持ちを変えたのか」と問われると、「この話(BOE総裁就任)は、非常に長い時間をかけて断続的に行われた。私は正式なプロセスの中で応募しておらず、交渉はこの2週間で急速に進展した」と打ち明けている。就任の話が進んだのは応募を締め切った1カ月後ということになる。

現地メディアによれば、オズボーン財務相の熱心なアプローチがあったという。公募という形は取ったものの、結果的には、財務相が意中の人を口説き落としたともみられるわけだ。もっとも、選定プロセスについて、「批判的な報道はあまり見られない。経験主義に立脚する英国社会の考え方を示しているのではないか」(英国在住アナリスト)との声が多い。外部登用の人材として申し分ないということだろう。

異例の人選で内外にサプライズを与えたが、BOEは政策運営で難しい舵取りを強いられている。政策金利を過去最低の0・5%に引き下げ、国債買い入れを増やして積極的な金融緩和を進めているが、11年10~12月期から3四半期連続のマイナス成長。金融緩和でも思うような景気回復につながらないという、先進国の中銀に共通ともいえる課題を抱える。「カナダ中銀時代の経験を生かす」と強調したカーニー氏。気鋭のカナダ人が大舞台で手腕をふるう。

(本誌:井下健悟=週刊東洋経済2012年12月8日号)

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