ガンで世界3位内目指す 買収価格はごく平均的だ−−長谷川閑史 武田薬品工業社長
-- 今回なぜ8800億円もの大型買収に踏み切ったのか?
武田薬品が真の世界的製薬企業へ飛躍するには、強みである生活習慣病領域の充実に加え、アンメットニーズ(まだ満たされていない医療ニーズ)が高く、今後、事業の成長も期待できるガン領域で、世界的なリーディング企業としての地位の獲得が急務だった。が、パイプライン(新薬候補)の不足が響いて売上高では出遅れており、新薬の強化は喫緊の課題。従来は技術提携、製品導入が戦略の中心だったが、今後、ビジョンの実現、長期的な成長を確固にするため買収を決定した。
-- 武田にとってミレニアム社の評価はどのようなものか?
ガンや炎症疾患領域で卓越した研究開発力・販売力を持つ世界有数のバイオ医薬品会社であり、当社のパートナーとしてベストだと判断した。将来的に米国市場でブロックバスター(売上高10億ドルを超える大型製品)候補となる多発性骨髄腫治療薬ベルケードを販売しており、パイプラインも有望だ。その開発力は、ベルケードが臨床試験開始からわずか4年半で販売許可取得にこぎ着けたことでも明らかだ。また、調査会社によると血液学専門家やガン専門医から7番目に質の高い営業担当者を持つ企業として認知され、専門誌でも「働きたいバイオ製薬企業」として13位という高い評価を得ている。
武田は2010年前後に米国でプレバシド(潰瘍薬)とアクトス(糖尿病薬)が特許切れを迎える。すでに後継品を承認申請済みで、ぬかりはないが、ベルケードの成長が特許切れのマイナス分を最小限に抑える対策の一つになる。
-- これまで自前主義を貫いてきたが、その転換なのか?
基本戦略はあくまでも内部成長だが、グローバル化に必要な自社研究強化に当たり、企業買収が最も効率的と判断した場合は、積極的にチャンスを追求していく。
-- ミレニアム社の経営体制はどのようにするのか?
現在の経営陣は引き続き経営に携わる。従業員のモチベーションは維持・向上するはずだ。また、本社があるボストンという好立地を生かして、当社も先端情報や人材プールへアクセスしやすくなるのではないか。
-- それにしても8800億円の買収金額は巨額だ。
当社にとって過去最高の投資になるが、ガン領域への意気込みを理解していただけるのではないか。何が何でも当社の持続的な成長に大いに貢献するよう、総力を結集して取り組んでいく覚悟だ。買収プレミアムについては、ここ数年間のバイオ医薬品の例を見ると平均値は50%くらい。今回のプレミアムは52・9%なので、その範囲内だ。
はせがわ・やすちか
1946年生まれ。70年早稲田大学政治経済学部卒業、武田薬品工業入社。医薬国際本部長、経営企画部長などを経て2003年から現職。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら