漫画編集者に学ぶ人をやる気にさせる技術

世界で最もスリリングな関係から生まれたものとは?

であるならば、この繊細な世界で培われたノウハウは、他の職業でも参考になるのではないでしょうか。

ただ、一口に編集者といっても、その分野は諸種様々。学術系の専門書を作っている編集者と、水着アイドルのグラビアを担当する編集者とでは、持っているノウハウは(おそらくは服装や物腰、そして風貌まで)かなり別物なことでしょう。

しかし煎じ詰めればそのスキルは、一つのところに行き着くように思います。要するに編集の技術とは、究極のところで言ってしまえば「人をやる気にさせる技術」。

 

その技術の発達は必然的

どんなに優秀であっても、自分で物を作るわけではないのが編集者。人に才能を見いだし、その才能を発揮してもらうのが仕事である以上、「この人と話すと仕事をする気になるなあ」と感じてもらえる編集者こそが優秀な編集者であり、逆に「この人と話すと気が滅入るなあ」というような人は、どんなに明敏な頭脳の持ち主であっても、いい編集者とはいえません。

この機微が最も顕著に表れているのが漫画の編集者ではないかと思います。
漫画とは人間の最もプリミティブな欲望を扱う表現。

それだけに、批評や批判では物事を前進させることができず「俺はこれが面白いと思う」という肯定が大切。「否定ではなく肯定こそが、人をやる気にさせる」という精神がこの分野の礎になっていると、漫画編集者と話していて、しばしば感じます。

斜陽のただ中にある日本のコンテンツ業界で、漫画表現が最後の砦になっている観があるのも、この辺りに秘密があるのかもしれません。

もっとも漫画の場合、「そんなに言うならおまえが自分でやってみろ」と言われたら、もうどうしようもない。だから必然的に人をやる気にさせる技術が発達したのかもしれません。そんな気もします。

 

【初出:2012.12.01「週刊東洋経済(新・流通モンスターアマゾン)」

 


(担当者通信欄)

自分自身も著者をやる気にさせる編集者になるべく精進しようと思いました。そして、記事にもあるとおり漫画の編集者さんは本当にすごい方ばかりで、お話を伺うと大いに刺激を受けます。寝てなくても元気、風邪をひいていてもパワフル(な人もいる印象です)。漫画編集者としての独特の「進化」、見事です。

さて、堀田純司先生の「夜明けの自宅警備日誌」の最新の記事は2012年12月3日(月)発売の「週刊東洋経済(特集は、損しない!生命保険)」で読めます!
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堀田先生の近刊紹介。中年の青春小説『オッサンフォー(講談社、2012年)。詐欺師四人組が大阪を舞台に繰り広げる事件も、ぜひ本コラムとごいっしょに♪
 
  

 

 

 

 

 

 

そして、堀田先生主宰の電子雑誌「AiR3」(2012年リリース)。漫画家、作家、研究者、ジャーナリスト…豪華執筆陣にも大注目です!

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