ランボルギーニの運転はどれだけ難しいのか 運転教室で体感した600馬力超マシンの実力
ここで“ペンデュラム(pendulum)”について説明しておこう。
これは日本語で“振り子”を意味する言葉であり、いわゆるフェイントモーションのことを指す。フェイントとはドライビングテクニックの一種で、たとえば左コーナーへのアプローチではまず右に転舵。するとテールは左に向けて流れ出すが、ここでタイミングよく左に転舵すると、それまで左に向けて流れていたテールの勢いが反動となって右側に向かって強く流れ始め、より大きなスリップアングルで左コーナーに進入する姿勢が短時間で整えられる。また、このフェイントモーションは、S字コーナーのように左右に素早く切り返すときにも有効。
というわけで、ひとつのコーナーをドリフトでクリアできるようになったあかつきには、是非ともその次のステップとして習得して欲しいテクニックなのだが、狙いどおりのタイミングで右、左(もしくはその反対)とテールを振り出すには、正確なドライビングがなによりも大切。したがって、ここでも小さなアクションが重要になってくるというわけである。
今回操ったランボルギーニ3台の特徴
最後に今回雪上で操った3台の特徴について紹介。アヴェンタドールよりもひとまわりコンパクトで、エンジン排気量も小さいウラカンLP610-4は、まるで手足のようにクルマの動きをコントロールできる。しかも、滑り始めたあとでその動きを抑えることも簡単。今回のアカデミアでもメインの“教習車”として活躍した。
いっぽう、パワフルなかわりに重く大きなV12エンジンを積むアヴェンタドールLP700-4は、まずパワーを微妙にコントロールするのが難しいし、慣性が大きいので一度滑り始めると修正するのが大変。このため、軽くてコンパクトなウラカンに比べると、より慎重にドライビングする必要があった。
その高性能版であるアヴェンタドールLP750-4 SVは、普通のアヴェンタドールよりもさらにコントロールが難しくなっていても不思議じゃないのに、なぜかこれがウラカン並みにラクラクとコントロールできる。
その秘密は、スタンダードのアヴェンタドールより50kgも軽い車重、そしてステアリングのギア比を電子制御するダイナミック・ステアリングのおかげだと、ランボルギーニでドライビングダイナミクス開発を担当するエンジニアは教えてくれたけれど、「ええ? それだけのことでこんなに違うの?」という驚きを隠せないくらい、SVは軽快なハンドリングを備えていた。世界限定生産の600台があっという間に完売したという人気ぶりも宜なるかな、といったところである。
ずいぶんと長々と書き連ねてしまったが、書きたいことはまだ山のようにある。風光明媚なリビーニョについても、居心地のいいホテルやレストラン、そして南米、北米、ヨーロッパ、インドといった国々から集まったランボルギーニ・オーナーたちとのフレンドリーな交流のことも是非記したかったのだが、それらはまたの機会とさせていただこう。なにしろ、私はまだ何度でもランボルギーニ・ウィンター・アカデミアに参加させてもらいたいと思っているのだから……。
(文:大谷 茂)
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