習近平は政治改革を避けて通れない 景気・経済観測(中国)

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

11月9日発表された中国の主要指標は、2010年1~3月期より続く経済の減速傾向が反転持ち直しに向かう兆しを示すものであった。工業付加価値生産の実質伸び率は12年8月の前年比プラス8.9%を底に、緩やかながらも2カ月連続で持ち直し、10月は同プラス9.6%となった。

個人消費の動向を示す社会消費品小売総額、輸出額も同様に伸びを高め、固定資産投資も9月よりは伸び率を落としたものの、公共投資に支えられて高い伸びを保った(推計ベースの実質値)。

胡錦濤時代、経済は目標とは逆の方向に

しかし、これらの指標発表の前日に開幕した中国共産党第18回全国代表大会(以下、党大会と略)からは、自国の先行きに対する中国共産党の楽観姿勢は窺えなかった。むしろ危機感が滲み出ていたように思われる。それは、胡錦濤政権が掲げてきた目標とは逆の方向に現実が動いてしまったことに大きな原因がある。

胡錦濤政権は、江沢民時代に生まれた経済・社会の歪みの是正を政策の柱に据えてきた。投資・輸出依存型発展からの脱却、所得格差の縮小、環境改善などである。

これらの課題に取り組む姿勢を集約したのが、03年に胡錦濤前総書記が提起した「科学的発展観」という政治思想である。単に高成長を追求するのではなく、経済・社会・環境等、バランスのとれた発展を全国レベルで目指し、発展の恩恵は広く人民が共有すべきだという思想だ。

しかし、胡錦濤政権下においても、投資依存型の経済成長が続いた。胡錦濤氏が総書記に就任した02年当時、GDPに占める総固定資本形成のシェアは36.2%だった。それが2011年には過去最高の45.7%に上昇してしまった。その結果、中国の設備稼働率は1990年以降で最低水準にまで落ち込んでいるとの推計をIMFが発表しているほどである。

次ページ政策決定過程の正当性に重大な疑問も
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事