習近平は政治改革を避けて通れない 景気・経済観測(中国)

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所得格差も拡大した。所得格差の不平等の度合いを示す指標にジニ係数がある。数値が高いほど格差が大きいことを意味するが、中国のジニ係数は2002年の0.415から2009年には0.447にまで上昇、2011年までに0.435に下がったとはいえ、まだ高い(みずほ総合研究所推計)。格差拡大を問題視する声はかなり強く、党大会前に実施された多くのアンケート調査で、その是正が課題の筆頭に挙げられている。

環境問題についても、デモの多発が示すように、国民の不満は強い。中国の環境保護相も「中国は環境保護をめぐり敏感な時期にある」と認めている。

元凶は中国版「決められない政治」

改革の意欲はあったにもかかわらず、なぜ結果を出せなかったのか。それは中国が日本とは異なる意味で「決められない政治」に陥っているからである。

一般に権威主義体制は民主主義体制に比べて意思決定が速いといわれる。しかし、現在の中国は、選挙によって政策を巡る意見対立に白黒を付けるといった、政策に正当性を与える意思決定のメカニズムを欠いているがゆえに、利害関係が錯綜する分野を中心に、改革をなかなか進められない状態にある。

民主主義国家では、意思決定の遅さが問題視されることはあっても、政策決定過程の正当性に重大な疑問が挟まれることは少ない。だが、中国はこの正当性の問題が改革の進捗を左右する要因になってきているのである。これが中国版「決められない政治」の実態である。

例えば、「所得分配制度改革プラン」は2004年の起草からすでに8年がたっているが、まだ完成をみていない。今年末までの完成が目指されているが、その中身は具体的な改革措置ではなく、指導原則の提示にとどまる見込みだ。これほどまでに難航しているのは、既得権益層の抵抗が激しいからだと伝えられている。

また、関係当事者も多い。「所得分配制度改革プラン」による見直しの対象は、最低賃金政策、寡占的国有企業の利益分配のあり方や上級管理職の報酬管理、公務員手当て、高所得者に対する課税、社会保険制度の不公平性の問題など、多岐にわたる。

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