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大前氏「日本の地方はイタリアの村を見よ!」 小さな村が自力で1500億円稼ぐのもザラ

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  • 大前 研一 ビジネス・ブレークスルー大学学長
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イタリアの具体例を見ていきましょう。モデナは自動車の町です。フェラーリやマセラティなどの高級車を作っています。あるいは「パッケージングバレー」と呼ばれ、包装機械で有名なボローニャ。エルメスはフランスのブランドですが、エルメスのスカーフは、イタリアの絹織物の町、コモで作られています。ベラージオは靴で有名です。歌で有名なソレントは、寄木細工の机と椅子を作っています。他にも、エルメスの金具だけを作っている町があるなど、文字どおり小さな町から全世界に供給していることが分かります。

イタリアには、いわゆる大企業がほとんどありません。理由は簡単です。従業員15人未満の企業は税金が安くなるのです。ですから、従業員15人に満たない小さな企業が数百集まって、ひとつの町で同じものを作っている。これがイタリアの都市国家モデルの特徴です。

そのほか、今、イタリアではワイナリーが巨大な観光資源になっています。ワイナリーツアーというものを企画し、いいホテルに泊まってもらい、美味しいものを食べさせ、おカネをたくさんいただく。銘柄の知名度を上げ、輸出を伸ばす効果も期待できます。

日本に必要なのは「ブランド」と「価格設定能力」

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このイタリアモデルは、日本の地方創生にとって、非常に参考になるはずです。日本では、金属製洋食器で有名な新潟県の燕市、メガネで知られる福井県鯖江市などが、かなり近いところまで来ています。ただ、決定的に欠けているのは「ブランド力」と「価格設定能力」です。鯖江では、アルマーニのメガネのフレームを作っていますが、結局のところOEMでしかありません。つまり、ブランド力と価格決定能力を持っていないのです。これらを身に付けなければ、OEMを卒業できません。

これまでの日本は、「世界のマーケットを見る」ことを怠ってきました。世界の市場は、大企業に任せきりだったのです。世界のマーケットを相手にするなら、デザインと価格設定をきっちりおさえなければなりません。そうしなければ、日本の地方発プロダクツがアルマーニと競えるはずがありません。

アベノミクスは残念ながらうまくいかなかった、というのが私の見方です。地方、企業、個人、それぞれが混乱の時代に備えるしかないのです。政府主導の地方創生などあてになりません。ここから先は地方、企業、個人、それぞれが世界を視野に入れて、「これだけは世界でトップだ」と胸を張れるものを作っていくことが求められます。

明治以来、日本人は「坂の上の雲」を見上げ、野心を持って歩んできました。そういうアンビシャスな精神が、今、日本人に最も求められるものではないでしょうか。

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