大前氏「日本の地方はイタリアの村を見よ!」

小さな村が自力で1500億円稼ぐのもザラ

3番目はイタリアのケースです。イタリアではほとんど誰も国を信用していないといいます。それどころか、国は迷惑なものだと思っています。そして実際に、国家経済は破綻しています。しかし地方はちゃんとやっています。理由は簡単で、その地方ならではの産業を興して、高い値段で高いシェアをとるという都市国家モデルを実現しているからです。

ターゲットは世界のマーケットです。そのような都市が、イタリアには1500あります。「国破れて山河あり」ではないですが、イタリアの場合、国が破れても地方都市は生き生きしています。途上国の勢いに押されて苦しいとき、生産基地をルーマニアなどに移すことになっても、ブランドとデザインだけは絶対に手放しませんでした。自分たちはこれで勝負する、という強みを明確に意識しているからです。彼らは、自分たちの製品がなぜこれほどの高値で世界に売れるのか、その理由をよく理解しています。

小さな村が世界相手に1500億円稼ぐイタリア

日本という国は、今非常に迷走しています。「3本の矢」などという意味不明な話は相手にしないで、個人、企業、また地方は自分たちでどうすればいいかを自分の頭で考える。これが最も大切です。

私はこの間、自身が主宰する勉強会「向研会」のメンバーと一緒にイタリアに行きました。前述のように、イタリアには世界を相手に商品を作って売っている町や村が1500もあります。今回はパルメザンチーズやパルマハム、トスカーナのキャンティの生産地を見学しました。彼らにとってのエンドユーザーは世界のお客さんです。いろいろ見てきましたが、ほとんどすべてが1500億円の規模です。小さな村ひとつが、世界を相手に1500億円のビジネスを生み出しているのです。村自体が1つの会社、世界企業のようなコミューンができあがっているわけです。

このような地方創生のスタイルは、日本中どこを探してもありません。日本では、地方創生担当大臣の石破さんが頑張って1000億円の予算をつけるそうですが、1000億円のおカネを1800の市町村に配ったら、各市町村に1億円もいき渡りません。

愛媛県の今治市などは、これから今治タオルを日本発の世界的ブランドにしていくと言っていますが、おそらく100億円の規模にしかならないでしょう。世界を相手に100億では規模が小さすぎますし、普通にやると100億円ですら難しいと思います。イタリアのように、世界を相手に1000億など、大きな視野で地方創生を考えなければ駄目なのです。

そのためには、「考えられる人、方向を示せる人、構想を練られる人」を集める必要があります。おじさんたちがシニアリティ(年功序列)をチラつかせながら、ない知恵を絞ってもなにも出てきません。

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