「介護」と言う言葉を生んだ発明魂 フットマーク、アイデアが湧き出す仕組み
健康用品への展開
水泳が普及してくると、プールは運動の場というよりも、健康づくりのために行くところにもなってきた。水泳は健康に良いとはわかっていても、お母さん方が着る水着がない。そこで、フットマークが開発したのが「アクアスーツ」という、洋服と水着の中間の商品であった。
肌を過剰に露出させることなく、さほど激しい運動をしなくても寒くならないようにしようとすると、水着が体を覆う面積が大きくなる。そのことと水着の着脱しやすさを両立させるために、思い切って大きなファスナーを前につけた。
水泳帽も競泳用のぴったりとしたきついものだと目がつり上がってしまうが、ファッション性と着心地を追求した「ゆったりキャップ」でその問題を解決した。
また、介護の現場から吸い上げられてきた情報のなかに、高齢者が寝たきりになる最大の原因は、転倒による骨折だというデータがあった。年齢を経ると、骨格にもアンバランスが生じ、姿勢にも影響する。常に正しい姿勢がとられていれば、体の疲れは軽減されるし、転倒などもしにくくなるという。
そこで、フットマークは東京大学大学院身体運動科学研究室と協力し、「フィールアライナ」という身体教育インナーシリーズを開発した。これは介護従事者の作業時のインナーとしても広まっており、重作業に携わるスタッフにも歓迎されている。
全員参加の開発体制
このように、水泳用品から始まり介護用品、健康用品まで手掛ける同社は、次々に新しい製品を開発している。開発担当者は15人前後。コンセプトの試作から、設計し、型紙に起こし、色柄などを決めて、量産に持っていく。
その最初から最後までの全工程に、担当者の誰か1人がすべてかかわるようにしている。そのことが、新しい商品のコンセプトをよく生かすための、コミュニケーションの連続性を支えている。
また、絶えずユニークなアイディアが次々と出てくる仕組みとして、「アイデアBOX」制度がある。月1回の社内コンテストでは社員からの商品企画提案が募集されている。あえて参加資格を開発担当者に限らず、60人ほどの全社員がアイディアを持ち寄り、次の企画の芽を探し出すのである。