飛び抜けた成果を狙うなら異界にダイブせよ シャフトをグーグルに売った加藤崇氏に聞く
――ビジネスの環境だけでなく生活や教育環境まで整えて、優秀な人材を集めているのですね。
そうなんです。あらゆる角度から、知的生産性が高いものをここから生み出すために必要なものを全て結集させようとする制度が整っているんです。たとえば、自分の息子を学校に通わせようと思った時に、外国からきた子どもたちは30日以内にテストを受けるんですよ。もしそこで英語の成績が悪かった場合、無料でカリフォルニア州のフォロー授業を受けることができるんです。ここまでして、世界中の英知を一ヶ所に集結させようという試みは、アメリカしかできていないし、できないんじゃないかと思ってます。その点に関しては、毎日が驚きの連続です。
――そんなシリコンバレーで、加藤さんは今どんなチャレンジをしているのですか?
現在は日本のロボットベンチャーHiBot(ハイボット)という会社の、アメリカ法人の社長をしています(日本法人の社長も兼務)。この会社は東京工業大学発のベンチャー企業で、東工大が40年温めていた技術を使って、ロボットをつくっています。これまではベンチャービジネスとして目が出ていませんでしたが、ロボットの技術としてはハードウェアを中心に幅広く持っていて、かつディープな分野の技術も持ち合わせていたんです。
小径のパイプを検査するロボットに注目
――ハイボットでは、どのようなロボットをつくっているのですか?
今最も注目しているのは、パイプ点検ロボットです。石油とか、ガスのパイプラインの点検をするロボットのことです。油もガスも、爆発する危険性がありますよね。そのリスクを避けるために点検が大切です。パイプの大きさには種類があるのですが、小径のパイプを検査するロボットっていうのが、今まではなかったんですよ。
――今までにはなかったロボットをつくる、というのはシャフトの時と同じですね。
そうなんです。僕がハイボットでやるべきことは明確で、結局ロボットは人間の生活に役立つことが必要なんですよね。シャフトの時は商用製品がつくれなくて、どこまでいっても試作機でした。そして商用段階に行く前に、グーグルに売却することになってしまいました。それはそれで良かったのですが、今回は商用製品まで進めたいと思っています。
日本のハードウェア技術は非常に高いので、そこでビジネスをつくりだしてアメリカで旗を立てたいんです。それは日本のためにもなると思いますし、僕個人も興味があることなんです。遅れた分野につっこんでいっても勝てる気がしませんが、ロボティクスに関しては日本がいまだ世界の中心軸の一角を形成しています。だからこそ、他の追随を許さない分野である日本の技術を、アメリカにおいてビジネスとして根付かせるということが今の僕にとってのチャレンジです。
――シャフトの時と同じように、前人未踏の分野にチャレンジしているんですね。
僕、野茂英雄選手が好きなんです。やっぱり、実質的なパイオニアとしてメジャーに行って、野茂選手がドジャーススタジアムで投げて、ストライクをとるっていうところに意味を感じるんです。日本人でシリコンバレーに来ているビジネスパーソンはいっぱいいます。
でも、ものすごいビジネスを立ち上げて大きくできた人は、まだいないと思うんです。僕の人生はずっと道場破りなんですよ。今も闘争心にあふれています。誰も成功してないことをやってやりたいんです。今は日本ではなく、こちらで戦いたいと思っています。
――加藤さんはまた大きな壁を乗り越えるつもりなんですね!
この壁は結構厚いですよ。石油とガスの業界って、アメリカにおいてはものすごく白人社会なんです。そんな中、日本人である僕が進めていくわけですからね。その上、ハードウェアって開発にも修正にも時間がかかって、中々思うように進まないこともあります。でも僕、つらいことにしか興味ないんですよ。マゾヒストとしては最高の環境だと思います(笑)。
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