理解が追いつかない「発達障害」と生きる

医師も親も迷っている

「息子の将来を思うと、一緒に死んだほうがいいのではと思いつめた時期もあった。悩みつつ、障害を受け入れつつ、前を向いて歩けるようになりました」

「普通」より笑顔が大切

厚労省では、子どもの育ちが心配と感じた早期からの親子支援を急ぐ。専門家による「ペアレント・トレーニング」に加え、保育士ら地域にすでにある人材を活用する「ペアレント・プログラム」も支援策の1つと位置づけた。だが「ペアトレ」「ペアプロ」を合わせても、全国での実施は231市町村だけだ。

支援の仕組みがうまく機能していない現状もある。16年度予算で464億円投じる地域拠点の「発達障害者支援センター」の約6割は民間の法人に委託されているが、一部は丸投げ状態だとも聞く。本来は、都道府県や政令市がセンターの活動をバックアップすることが重要だが、そのための中核となるべき「発達障害者支援体制整備検討委員会」がうまく機能していない。そもそも委員会さえ設置していない自治体が6カ所ある。

「支援制度の普及はこれから。今年度からは国として各地に出向き、支援強化の普及活動を展開していきます」(日詰さん)

家庭で「早期療育」に取り組む親も多い。子のために「いまやれること」があるのは、親として希望でもある。だが、自宅で療育を頑張る最中、母親がうつになり、父親が仕事を休んで手伝ったというケースもある。

中学生になった息子がいる自閉症療育アドバイザーのshizuさんは、こう助言する。

「私自身、療育に集中しすぎて息子が『普通』になることを目指していた時期もありました。でも、そこを目指すとキツキツになる。大切なのは子どもが笑顔で生活できること、幸せになれること。そして少しずつ取り組むこと。プログラムが全部できなくても、お母さんがゆるんでいるほうが、長い目で子どもにとっていいと思うんです」

※この記事AERA5月23日号から5回にわたり連載している集中連載「発達障害と生きる」の第1回です。

※AERA 2016年5月23日号

(ライター・古川雅子)

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